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生活保護のリアル みわよしこ

“自業自得”で支援を打ち切っていいのか
アルコール依存症者の日常から探る生活保護の必要性

みわよしこ [フリーランス・ライター]
【第3回】 2012年7月13日
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 生活保護受給世帯の約35%は、傷病者・障害者世帯である。その中には、アルコール依存症患者も含まれている。「自分が飲みたくて酒を飲んで、飲み続けた末にアルコール依存症になって、生活保護を受給して治療を受けるとは?」と思ってしまう方は少なくないだろう。今回は、1人のアルコール依存症患者を通して、生涯付き合わなくてはならない病気を抱える人々にとっての生活保護について考えてみたい。

「お母さんは2人いらない」

 Kさん(67歳)は、小学3年生のその日のことを、今でもとても鮮明に覚えている。

 親戚のおじさんが、女性を伴って長野県の実家を訪れた。そして、5人の子どもたちを居間に座らせた。おじさんとその女性は、子どもたちと向かい合って座った。おじさんは、

 「今日からお前たちのお母さんだ」

 と言った。

 Kさんは、5人姉弟の末っ子だった。3人の姉と1人の兄は、継母がやってくることを既に知っているようだった。Kさんだけが知らされていなかった。実母は、その2年前、Kさんが小学1年生の時に病死していた。

 Kさんは、何も言えなかった。ただ、心のなかで「お母さんは2人いらない」と思った。そして、高校を卒業して実家を離れるまで、継母とは一度も口をきかなかったそうだ。

 父は歯科医だった。昭和19年生まれのKさんは、終戦直後の混乱の中、経済的には比較的恵まれた環境で育った。

 昭和37年、高校を卒業したKさんは、すぐに海上自衛隊に入隊した。航空部隊の写真隊員として訓練を受け、「成田空港建設反対デモの写真をヘリコプターから撮影する」などの航空写真業務に従事するようになった。

飲酒と縁の切れなかった自衛隊時代

 海上自衛隊に入隊した若い自衛隊員は、厳しい規律のもと、基地内生活を送る。もちろん、基地内での飲酒は厳禁されている。

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、1匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


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急増する生活保護費の不正受給が社会問題化する昨今。「生活保護」制度自体の見直しまでもが取りざたされはじめている。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を知ってもらうことを目的とし、制度そのものの解説とともに、生活保護受給者たちなどを取材。「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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