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働く男女の「取扱説明書」

気がついたらアルコール依存、うつ、自殺…。
男性が払う「ストレス不感症」のツケ

――女性は「ストレス・リボ払い型」、男性は「ストレス・一括払い型」

西川敦子 [フリーライター]
【第20回】 2008年12月5日
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 「ちょっとあなた!」

 突然妻が振り返ったので、中田堅司課長は、あわてて新聞で顔を隠した。妻が「ちょっとあなた」と言い出したら、そのあとに必ずあれこれ文句が続くのである。

 「あのとき、あたしに『誰が食わせてると思ってるんだ』って言ったわよね。あれ、どういうこと?」

 (は? あのときって……?)

 「ほらあのときよ! 去年、幼稚園の父母会でくたくたに疲れて、ストレスもたまってて、ちょっと愚痴ったら、あなたは『仕事のことで頭がいっぱいだから黙れ』って。そりゃあなたはいいわよね、やりがいのある仕事ができて。でもあたしは、人間関係でへこんだりするの。つい頭に来たから、『そんな大変なお仕事なら、もっとお給料が高くてよさそうなものよね』って言ったのよ。そうしたら、あなたが怒り出したのよ!」

 「……そんな昔の話、覚えてないよ」

 「あらそうなの。のん気でいいわね。でも、『オレが食わせてやってるんだ』なんて言われたら、こっちは傷つくわよ!今日の新聞にも『女性が傷つく言葉ランキング第8位』って出てたんだから」

 中田氏にとっては、「給料がいまいち」という妻の発言も十分に傷つく言葉だ。だが、妻はそんな男心にはおかまいなし。だいたい職場では疎外感こそあれ、やりがい感なんてほとんどありはしない。弱音を吐かないからと言って、心臓に毛が生えているとでも思っているのだろうか――。

傷ついたことを
忘れられない女性の脳

 なんだかんだいって、男は意外ともろい。そして、女はけっこうたくましい。平均寿命を比べてみても、女性の方がしぶといことは一目瞭然だ。

 しかし、脳の仕組みからいえば、ストレスをためやすいのは男性より女性のほうである。第一に、女性ホルモンのエストロゲンは脳の前頭前皮質を通じ、記憶をつかさどる「海馬」に感情の情報を送る。したがって、女性は昔あったいやな出来事をなかなか忘れることができない。

 また、ストレスを促進させる扁桃体の感受性も女性の方がずっと高く、男性の2倍はあるといわれている。扁桃体の情報は、左右脳をつなぐ前交連へと伝達されるが、この前交連も女性の方がずっと太い。

 したがって、女性は昔傷ついたことをいつまでも忘れられない。そればかりか、ささいなことでショックを受け、それについて勝手な想像をふくらませてまた落ち込む――という悪循環に陥りやすい。

 「あのとき、あなたこう言ったでしょ!」
 「今の一言、すごく傷ついた!」
 「ほんとうは私のことなんかどうでもいいんでしょ!」

 こんな言葉が女性の口から飛び出してきたら、「エストロゲンと扁桃体と前交連の仕業だな」と思ってほしい。

女性はストレスの
コントロールが上手

 だが、その一方、ストレス耐性が強いのも女性の特徴である。これはエストロゲンの「もろ刃の剣」効果によるところが大きい。エストロゲンは、いやな記憶を脳に植えつけ、女性にストレスを感じさせるだけでなく、ストレスによるダメージから神経細胞を守る働きもしているのだ。

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西川敦子 [フリーライター]

1967年生まれ。上智大学外国語学部卒業。編集プロダクション勤務を経て、独立。週刊ダイヤモンド、人事関連雑誌、女性誌などで、メンタルヘルスや介護、医療、格差問題、独立・起業などをテーマに取材、執筆を続ける。西川氏の連載「『うつ』のち、晴れ」「働く男女の『取扱説明書』」「『婚迷時代』の男たち」は、ダイヤモンド・オンラインで人気連載に。


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