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スマートフォンの理想と現実

メール内容を読み取るインタレストマッチ広告が物議
老朽化した「通信の秘密」は聖域なき再考が必要か

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【号外】 2012年7月13日
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 NTT設立に合わせて電気通信事業法が制定されて、およそ30年。前身の公衆電気通信法から数えると、約60年。この間の時代の変化を踏まえ、同法第4条にある「通信の秘密」に、私たちはどう向かい合えばいいのだろうか。

 実際、Yahoo!JAPANの指摘によって公のものとなったが、すでにWebサービスの世界において「通信の秘密」は事実上崩れており、また今後も、動画配信によるトラフィック消費の抑制に向けた調整や、青少年保護を目的としたフィルタリング等、ニーズは拡大している。パケットの中身の詳細を見る「ディープ・パケット・インスペクション(DPI)」も、ある面ではやむを得ない状況でもある。

 Yahoo!JAPANの宮坂社長も「日本のヤフーが駄目でグーグルがよいとなれば理屈に合わない。1国2制度はおかしい」と指摘している。あたかも前言を翻すようだが、もし「通信の秘密」を絶対視せずに問題を考えるとなれば、確かに一理ある指摘であって、「通信の秘密」にがんじがらめになるのは日本の事業者(とりわけ通信事業者)ばかり、ということになりかねない。

 「通信の秘密」を絶対視するあまり、結果としてGoogleなど「黒船」の援護射撃をしているとなると、日本国の法律である存在意義さえも失われかねない。一方で、プライバシーがより一層重要になる「データ中心の社会」においては、これまで以上に「通信の秘密」の精神と適用範囲が、より具体的に定められ、また厳格に運用されなければならないのも事実である。

 今回のYahoo!JAPANの問題は、単なる事業者間の対立だけでなく、「パンドラの箱」を開けるきっかけになるかもしれない。そしてその変化はおそらく、サービスやコンテンツ等を含めた「情報通信産業」全般を巻き込む、大規模な地殻変動をもたらすことになるだろう。おそらくYahoo!JAPANの親会社であるソフトバンクは、そこまで見越しているはずだ。

 果たして、規制当局である総務省は、どんなさばきを見せるのか。しばしこの問題から、目が離せない。

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クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

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