この数年、世帯主が稼働年齢で、障害者・傷病者・ひとり親世帯のどれにも該当しない生活保護受給世帯が増加している。厚生労働省統計では「その他世帯」とされる世帯である。「その他世帯」は、2000年には生活保護受給世帯の7.4%であったが、2010年に13.5%、2011年に16.2%と増加する一方だ。

今回は、「働けるのに働かない」「仕事を選びすぎ」などと批判されがちな「その他世帯」、それも働き盛りの単身者の生活と仕事を紹介したい。その批判は、当たっているのだろうか?

「再就職はできたけれども…」
ラブホテル清掃員として働く今の迷い

働き盛りの生活保護は本当に許されないのか <br />急増する稼働年齢層受給者を待ち構える「高い壁」吉田さんの住むアパート。老朽アパートだが、内装は整備されている。概ね四畳半程度のワンルームに、小さな台所とユニットバスがある。
Photo by Yoshiko Miwa

 吉田信之さん(仮名・42歳)は、今、迷っている。約1年間にわたる就職活動を経て見つけた現在の仕事を、続けるべきなのだろうか? それとも、早めに辞めるべきなのだろうか? 生活保護受給を続けるべきなのだろうか、それとも生活保護から脱出するべきなのだろうか?

 吉田さんは現在、清掃会社に勤務している。待遇は正社員だ。手取り月給は18万円。交通費も支給される。

 額面だけを見れば、東京都で現金として支給される生活保護費(生活扶助+住宅扶助)13万7400円を上回る。しかし、会社は労災保険料・雇用保険料・健康保険料・厚生年金保険料を支払っていない。健康保険料と厚生年金保険料を自分で支払うと、約4万3000円。実際に手元に残る金額は、13万7000円。生活保護水準より、やや低くなってしまう。

 とりあえず現在は、再就職してまだ2ヵ月。労使とも「互いに様子を見る」という感じだ。ずっと、この仕事を続けられるかどうかは分からない。吉田さんは現在も、生活保護の受給を続けているが、全収入を福祉事務所に申告している。生活保護費に加え、基礎控除額の28950円が手元に残る。合計で約16万円となる。病気やケガの際には、福祉事務所に医療券を申請し、医療扶助で治療を受けている。就職したからといって、健康保険料や医療費の自己負担に耐えられるだけの経済力が得られるようになったわけではない。むしろ逆かもしれない。

 吉田さんの仕事は、2人の同僚とともにラブホテルに派遣されての清掃だ。主に「休憩」と「休憩」の間の部屋のクリーニングとセッティングを担当している。繁盛しているラブホテルでは、客が出ていくと同時に、次の客が入る感じである。クリーニングとセッティングの所要時間は2~3分。長くても5分程度という。その「長くても5分」の間に終わらせなくてはならない仕事の内容は多岐に渡り、量は膨大だ。備品の点検・シーツの交換・アメニティの整備・冷蔵庫の飲み物の補充……。

 勤務形態は、正午から翌日の正午までの24時間連続勤務。仮眠時間は、一応は存在するが、多忙な時には「仮眠」などとは言っていられない。勤務明けとその翌日は休日になる。休日が多く見えるが、変則勤務は非常に肉体的な負荷が高いものである。