個人が特定のプロジェクト等に資金援助を行うクラウドファンディング・サービスは、この数年で瞬く間に浸透していった感がある。米「Kickstarter」を筆頭に、日本でも「CAMPFIRE」「READYFOR?(レディフォー)」などが、とりわけ、東日本大震災以降、広く認知されるようになった。
こうしたプロジェクト支援型のクラウドファンディングのみならず、好きなアーティストやイラストレーター、ブロガーなどの個人を応援する気運も、一方で高まりを見せている。昨今の有料メルマガの流行が顕著な例だが、優れたコンテンツに対価を支払ってもよいと考えるユーザーは、思いのほか増えているようだ。
そうした中、クリエイターへの“投げ銭”システムを提供してきた「Grow!」が、この8月に大きく方向転換した。従来は、ブログやサイトに専用リンクを貼ることにより、投げ銭を実現していたがこれを廃止。リニューアル後は、クリエイターやプロジェクトチーム等が会費を募り、支援者に対して独自のコンテンツを提供するコミュニティサービスとなった。
とりわけ今回のリニューアルでの大きな特徴は、“継続性”を強く意識した設計となっていることである。会費制のコミュニティを運営することで、クリエイターは継続的に収益を得ることができる。また、支援者もオリジナルの特典を長く受け取れるだけではなく、クリエイターとのより親密なコミュニケーションを図れるというメリットがある。
「どんな活動も“継続する”ことがなにより大切なことです。それを実現するためには、まずそこに主眼を置いた仕組みづくりが必要だと考えました。これから追加していく機能も、“継続性”をより強いものとするためのものを準備しています」(Grow! Inc. Chief Creative Officer カズワタベ氏)
コミュニティの開設は申請制となっており、承認されれば支援者を募るためのコミュニティページを作成・編集することができる。「サポーター会費」は、500円から1万円の範囲内で任意の金額を決める。支援者が払った会費の中から、サービス利用手数料の30%を差し引いた金額が収益となる仕組みだ。
リニューアルから2週間ほどで約50のコミュニティが開設されているが、その内容はユニークなものが目につく。「ベースの弾き方を教えます」「国内外の注目webサービス紹介」「似顔絵アイコンつくります」といった個人のクリエイターから、ギター工房やカフェなどの小規模サービスを中心に、コミュニティが立ち上がっているようだ。
「Grow!は、ファンクラブ、会費制コミュニティ、あるいは定期的なスキルマーケットにもなります。サポーターとの関係性と、自分が提供できる特典によってさまざまな形に機能するサービスです。ですから、いわゆるクリエイターに限らず、個人・団体でさまざまな活動をしている方にもご利用いただければと思っています」(同氏)
クラウドファンディングは、集まった資金を基に製品やサービスを実現し、支援者に還元するというスタイルが多い。だが、あらかじめ設定された目標が終了してしまうと、支援者との関係も切れてしまいがちだ。一方、コミュニケーションの要素を取り入れ、クリエイターとの継続的な交流にも価値を置いた点に、Grow!の新しさがある。
「現在は、Grow!を使って成功したというロールモデルを各ジャンルで生み出していくことが大切だと考えています。例えば、インディーズで活動しているバンドがGrow!を通じてサポーターを集めて活動を継続し、その結果メジャーデビューを果たしたなんていうことが起きてくると面白い」(同氏)
今後はイベントの管理機能やコンテンツの販売機能など、コミュニティ運営機能の強化の一方、音楽レーベルや芸能事務所などとの連携も視野に入れているとのことである。クリエイターと支援者との双方が“ともに成長する場”として機能すれば、従来にはない、思わぬ才能が飛び出してくるかもしれない。
(中島 駆/5時から作家塾(R))