その上で、まったく別のポイントにも注意を払っておくべきだと和泉氏は説く。現在、約4人に1人は65歳以上の人が占め、そのうち女性の2人に1人が90歳、約4人に1人は95歳まで生存(厚生労働省「平成23年簡易生命表」)するという。

「先々で大変なことになり得るのが医療と介護です。現在いわれている“社会保障と税の一体改革”の真意を知っておくべきです」

 これは、人口で大勢を占めている団塊の世代に対処する政策であるということだ。まず、団塊の世代で一気に膨らむ社会保障費の財源を増税で確保する。同時に、支出カットの観点から医療・介護制度の中身を変えようとしているのである。

「医療と介護は極力在宅で済ませようというのが国の方針。他の先進国と比べれば依然として日本の在院日数は長く、今後は通院治療が増え、在院期間はより短縮化されていくでしょう。そうした医療・介護体制の中での生活や保障を考えていかなければなりません」

資産が少ない人ほど
相続対策が必要

 さらに、「資産などほとんどない」と思っている人であっても、これからは相続の問題を真摯に考えておくべきだという。

「高齢化が進めば、おのずと日本は多死社会を迎えます。今後の税制改正は、従来のように富裕層だけに狙いを定めず、一般的な所得層からも広く相続税を徴収して税収拡大を図るものになっていくでしょう」

 つまり、これからは、広い土地や豪邸を所有していなくても結構な額の相続税が発生するケースが出てくるのだ。ただし、打つ手がないわけではない。例えば、自宅の一部を賃貸物件として他人に貸せば、相続税計算時の評価額が純粋な住宅よりも低くなる上、家というストック(資産)がキャッシュフロー(賃料収入)を生む。そういった相続税対策やもしもの場合の遺産の分け方などについて、できるだけ早いうちに親や兄弟と話し合っておくべきだと和泉氏は指摘する。

「むしろ、親が元気なうちのほうが話を切り出しやすいもの。結論を焦らず、少しずつ時間をかけて話を進めていくといいでしょう。今後さまざまな制度改革が行われ、経済・社会状況も変化していきます。いざという場面で機敏に対処するためにも、今はじっくりと情報収集に努めながら備える時期です」