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山田厚史の「世界かわら版」

尖閣は「棚上げ」から「共同開発」
領土という戦争の痕跡を超える発想を?

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
【第20回】 2012年10月11日
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 人の暮らしさえない「孤島」の領有に、なぜかくもナショナリズムが沸騰するのか。

 地下資源や漁場という経済利得が絡むとも言われるが、人々の興奮に火を付けるのは「領土」に絡む戦争や侵略の記憶ではないか。領土問題は「戦争の傷跡」なのだ。

 尖閣列島、竹島、北方四島は日清戦争、日韓併合、第2次大戦という武力を伴った近代の不幸が生んだ痕跡である。忘れたい古傷を掻きむしれば、記憶の奥底に埋めてきた憎悪や反発が吹き出す。「被害者」が叫べば「加害者」はムキになる。冷静な議論が出来ない世論の沸騰が起こる。

 尖閣を巡る紛争は、日中双方の自重で最悪の事態は回避されつつある。挑発的な強硬姿勢を見せる中国も、武力行使につながりかねない偶発的事態は避けようとしている。衝突が不幸を招くことを双方の政府は分かっているからだ。

次は日本がカードを切る番

 次は日本がカードを切る番だ。紛争の引き金を引いたのは「尖閣の国有化」だから。石原都知事による買収という危うい事態を避ける配慮があったにせよ、「領土問題は棚上げ」という封印を解いたのは日本である。仕掛けた側に納め方を、まず考える責任がある。

 和解への入り口は「領土問題が中国との間に存在する」と認めることだ。その上で国際司法裁判所で第三者を交えて話し合う。

 通常の民事訴訟と同様、法廷ではそれぞれが主張を真っ向からぶつけ合えばいい。その過程で双方が歩み寄る「落としどころ」を探ることが肝要だ。判決をもらうことより、尖閣をどうすれば互いの利益と協調に役立つかを真剣に考える機会にしたい。島を奪い合うのではなく、共同管理にすることで歩み寄る。

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山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


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元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

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