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かの残響、清冽なり――本田美奈子.と日本のポピュラー音楽史

「ミス・サイゴン」から「蝶々夫人」へ、
初めてオペラのアリアを歌った日(1996年)

坪井賢一 [ダイヤモンド社論説委員]
【第12回】 2012年10月19日
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 作詞作曲に取り組み、ライブやイベントでポップスを歌い、ミュージカル「王様と私」の練習が続いていた1996年6月28日。 本田美奈子さんは初めてオペラのアリアを歌った。曲目はプッチーニ「蝶々夫人」第2幕の有名なアリア「ある晴れた日に」である。プロデューサーは作曲家の三枝成彰さん(1942-)だった。

クラシックへの扉を開けた三枝成彰さん

作曲家・三枝成彰さんが1996年6月28日のイベントのプロデューサーだった

 会場はTFTホール1000(東京・有明)。「第4回ファッション交響楽」と題されたこの日のイベントは、エイズ患者支援のためのチャリティーイベントで、毎日新聞社の主催事業だった。

 21人の政治家、作家、タレント、歌手などの著名人がオーケストラと共演するというもので、クラシック音楽の隠し芸を披露する趣向だった。

 本田さんの出番前後のプログラムを当日のパンフレットから抜き出すと、

「ファッション交響楽」のパンフレット
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小川知子(歌手・女優)
・打楽器演奏、レオポルド・モーツァルト:「おもちゃの交響曲」より第1、第3楽章
谷口久美(LVMHディレクター)
・歌、サンサーンス:《サムソンとデリラ》より「貴方の声に心が開く」
松村邦洋(タレント)
・指揮、ブラームス:「ハンガリー舞曲第5番」
本田美奈子(歌手)
・歌、プッチーニ:《蝶々夫人》より「ある晴れた日に」
江田五月(衆議院議員)
・ヴァイオリン演奏、ザイツ:「ヴァイオリン協奏曲第5番」より第1楽章、編曲 榊原栄
ピーコ(服飾評論家)
・エンリコ・マシアス:シャンソン「愛の生命」編曲 榊原栄

 と、続く。実際の順番と曲目は多少変わったらしい。たしかに隠し芸大会だが、楽器や歌に自信のあるセレブリティを選んでいることがわかる。三枝さんはプロデューサーとして、プロのトレーナーを用意し、それぞれレッスンの機会をつくっている。声楽のトレーナーには二期会の北川潤さんの名前があった。

 北川さんは94年ごろから本田美奈子さんの声楽指導を行ない、アルバム「Junction」の1曲目、「祈り」の男性合唱団の名称にクレジットされているので、本田さんとはすでに師弟関係にあったようだ。ちなみに、本田さんが師と仰いでレッスンを受けた声楽家は北川潤さん、岡崎亮子さん、山口琇也さんの3人である。「ある晴れた日に」の個人レッスンは岡崎さんに受けている。

 このチャリティコンサートの聴衆は、本田美奈子さんの名前を見て「ミュージカル女優がどのようにオペラのアリアを歌うのか?」と期待したか、あるいは「アイドル出身歌手がオケをバックにクラシックをどう歌うのか?」と、興味津々だったに違いない。

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坪井賢一 [ダイヤモンド社論説委員]

1954年生まれ。78年早稲田大学政治経済学部卒業後、ダイヤモンド社入社。「週刊ダイヤモンド」編集長などを経て現職。著書に『複雑系の選択』『めちゃくちゃわかるよ!経済学』(ダイヤモンド社)『浦安図書館を支える人びと』(日本図書館協会)など。


かの残響、清冽なり――本田美奈子.と日本のポピュラー音楽史

日本のポピュラー音楽の誕生をレコード産業の創始と同時だと考えると、1910年代にさかのぼる。この連載では、日本の音楽史100年を、たった20年の間に多様なポピュラー音楽の稜線を駆け抜けた本田美奈子さんの音楽家人生を軸にしてたどっていく。

「かの残響、清冽なり――本田美奈子.と日本のポピュラー音楽史」

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