国内企業の株価低迷で、保有株の減損と売却による実現損に頭を悩ますみずほ
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 株安の波が、みずほフィナンシャルグループ(FG)に押し寄せている。10月初旬、同社は保有株の減損で1737億円の損失を計上すると発表。取引関係を強化するために「政策保有」するシャープなどの電機株や、関西電力などの電力株の割合が大きいことが響いており、前期の最終利益(4845億円)の36%に当たる金額の損失処理を迫られた。

 今期の計画では株式による損益をゼロとしているだけに、政策保有株の株価低迷が今後続けば、業績の大きな重しとなる。

 さらに政策保有株をめぐって、みずほの幹部が頭を悩ませているのが「5%ルール」だ。

 銀行は独占禁止法などの規定で、5%を超える企業の株式(議決権)の保有を原則禁止されている。みずほFGは来年7月に、傘下のみずほ銀行とみずほコーポレート銀行の合併を予定しており、両行の合算で保有株の割合が5%を超える場合は売却しなければならない。売却の対象は食品や工作機械メーカー、運輸など数十社に上る。

 一方で、企業側にとっては株価が低迷している現状で、安定株主のはずの銀行が株に売り圧力をかけるようなことは受け入れ難い。

 「誠意を持って対応するしかない」。みずほの幹部の一人はため息交じりに話す。株売却の内諾を得るため、ある上場企業を訪問したときは、苦り切った表情で「仕方ないですね」と話す企業役員を前に、ひたすら頭を下げるしかなかったという。

 みずほ自身も、国内企業の株価が低迷する状況で保有株を手放せば、売却損が膨らむリスクがあり、売却時期の見極めに腐心しているようだ。

 2年前の中期経営計画で掲げた「政策保有株、1兆円削減」が思うように進まない中で、5%ルールという規制に株売却の背中を押された格好だが、みずほFGが旧行意識を温存させ「2バンク制を敷いてきたゆがみを解消するために(保有株をめぐる損失は)必要な痛み」(みずほ幹部)でもある。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 中村正毅)

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