アップルの自社製地図に不具合続出
ティム・クックCEOが異例の謝罪

 グーグルの地図サービス「グーグルマップ」には「交通状況」という渋滞情報の表示機能がある。道路が「低速」から「高速」までの4色に塗り分けられ、その時点の交通の流れを示す。曜日や時刻を設定すれば、その時間帯の典型的な交通状況も教えてくれる。

 このリアルタイムの渋滞情報はどうやって収集されているか、ご存じだろうか。

 実は、街を移動しているアンドロイド(グーグルの携帯電話向けプラットフォーム)のスマートフォンを使っているユーザーの位置情報と速度データを、グーグルは常に収集している。その大量のデータを計算処理することで、リアルタイムの交通状況を表示しているのだ。

 ただし、アンドロイドユーザー全員ではない。「マイ・ロケーション(現在地)」の機能を有効にしている人のみだ。当然ながら、ユーザーの数が増えれば増えるほど、情報の精度は高まる──。

 アップルは9月21日に新型スマートフォン、iPhone5を発売した。アップルはこれまで、iPhone用の標準の地図アプリ「マップ」では、グーグルマップの地図データを使用していたが、このiPhone5から、独自開発の地図に切り替えた。

 ところが、この新マップの出来は散々で、地名や道路の情報が少なく見た目にもスカスカな上、表示されている地名の位置や表記が間違っているケースが相次いだ。

「お客さまにご迷惑をおかけしていることに対し、心よりおわび申し上げます」

 アップルのティム・クックCEOは自社製マップの発表から9日後、異例の謝罪メッセージを発表した。改良に取り組む間の代用品として他社の地図アプリを名指しで推奨するなど、いつもの自信満々な態度はどこへやら。地図責任者の上級副社長の退任も決めた。

「最高の体験を届ける、世界で最高レベルの製品を作ること」を標榜するアップルが、なぜこんな“出来損ない”を世に出したのか。何より、なぜグーグルマップとたもとを分かったのか。

 その答えは、冒頭のアンドロイドの事例から読み取れる。いまやスマートフォンには必ず、GPSやWi-Fiなど、位置情報を検知する機能が付いている。スマートフォンのユーザーが今、どこで何をしているかは容易にわかるのだ。そして、スマートフォンのユーザーが増えれば増えるほど、生活者の位置情報は蓄積され、“ビッグデータ”という宝の山と化す。