米国のエネルギー市況を見ると、年初に比べて、原油価格(WTI、ウエストテキサスインターミディエイト)は1割超の下落となっているが、天然ガス(ヘンリーハブ)は2割超も上昇した。これは、シェールガス革命で天然ガス価格は下がり、中東の地政学リスクによって原油市況が押し上げられているというイメージとは異なる。
確かに足元では、中国や欧州での需要鈍化が原油安につながり、減産見込みや冬場の暖房需要が天然ガス市況を押し上げた。
エネルギー市場の今後の展開を考える上では、エネルギー関連の技術革新が集中的に起こっている「閉鎖的な米国のエネルギー市況」と、地政学問題による「リスクプレミアムが上乗せされた国際エネルギー市況」という現在の二重の構図を押さえておくことが重要だと思われる。
まず、原油については、米国産のWTI原油は、欧州北海産のブレント原油に比べて2割安である。
実際には、米国でも海外市況の影響を受けやすい沿海部では、欧州並みの価格で原油が取引されているが、シェールガス開発の技術は原油にも転用されて内陸部では生産が増え原油が荷余りしている。米国では沿海部と内陸部では、1バレル当たり20ドルも価格差があるという状況になっている。
11年前には、1バレルの原油が20ドル前後で取引されていた。価格差が20ドルというのは尋常ではない。部分的には、列車での輸送が行われるほどだ。内陸部から沿海部に原油を輸送するパイプラインを建設・稼働させれば、大きな利益が生じるはずだが、オバマ政権では環境問題などを見極める必要があるとして、パイプラインの新設計画に慎重なスタンスを取ってきた。