『御社の営業がダメな理由』『社畜のススメ』など累計40万部を超える著書を持つ営業改革・マネジメントコンサルタントの藤本篤志さんの新刊『営業の新PDCA大全』は、まさにコンサルタントのノウハウを全公開した一冊。無数の営業部を知り尽くしたコンサルタントしか知りえない驚きの問題点と、その解決策、改善策が詰め込まれています。コロナ禍によって、日本中の営業部がそのやり方を再考せざるを得なくなっていますが、藤本さんは、営業を立て直すにはPDCAをきちんと機能させることが効果的と言います。しかし、長年沁み込んだ惰性的な慣習、自分だけはこのやりかたでいいだろうという怠慢、本当に担当者の実力なのか、実は誰でも売れたのかといった評価の難しさなど、さまざまな営業部ならではの落とし穴がPDCAの適切な運用を阻んでいます。藤本さんによる「営業部に特化した新PDCA」のポイントを明快に解説します。

9割の営業部がPDCA最初の一歩で失敗する理由Photo: Adobe Stock

営業部のPDCAに欠けているGという発想

 スタートでつまずくと、何事もうまくいきません。PDCAも同じです。PDCAがうまく回らない最大の原因は、スタートのつまずきにあります。

 面白いことに、つまずき方は、どの会社も奇妙なほど同じです。Pで設定する計画が、年間〇〇目標額△△△△円の達成となっているのです。たとえば、年間売上目標額10億円の達成という感じです。会社によって、売上目標ではなく、利益目標、受注件数目標が掲げられるという違いはありますが、発想はどれも同じです。

「事前に設定した年間売上目標額を達成することが我々の計画(P)だ」と言われると、「それもそうだ」と思いがちですが、Pをこの設定でスタートしてしまうと、次のDは、「年間売上目標額達成のために、何をどう頑張るか」とならざるを得ません。

「取引先を重要度別に分類して、重要度の高い順に頻度高く商談する」「難易度の高い商談をクロージングするときは、上司を連れていく」などがその代表例です。「当社のDはもっと具体的だぞ」という会社でも、「各営業チームが具体的に行動目標を決めて、最低週1回以上、営業会議で確認する」という類(たぐ)いが大半です。PDCAに関する営業関係の本の何冊かに目を通しましたが、「自分を売り込むように創意工夫をする」「お客様の悩み・不安を丁寧に聞くことから始める」といった営業活動がDだと書かれていました。たしかに、英語のDOを表現したものに違いありませんが、PDCAが意味するDではありません。これではPDCAの運用がうまくいくはずもありません

 すべては、Pでのつまずきが招く失敗なのです。Pで具体的に書くべき活動計画がズレて、Dで設定されているのが実態です。

 営業コンサルティング現場の実践の中で、いろいろと試行錯誤を繰り返しました。その結果、たどり着いた結論が、Gという新しい概念の必要性でした。

 営業のための新PDCAを構築するにあたり最も工夫したのが、このGの概念を取り入れたことです。GはGoalの頭文字です。このGの概念は、私が考え出した―と言いたいところですが、大学時代に勉強したディベートやディスカッションの手法にヒントを得ています。どのような意見を論じようと、常にGoalを意識してロジックを組み立てる、という手法です。

 Gは、Pで考えてしまいがちな目標達成を移設する概念として使います。こうすることでPでは、Gを達成するために、何をどうすればよいか、という具体的な実行計画を丁寧に策定することが可能になります。

 これが私の新PDCAの特徴の一つです。

 図のGに記載している五つの目標には、営業部で一般的に使われているものを列挙しています。これらの目標、および目標のあり方については、いまさら説明するまでもないでしょうが、重要だと思えるポイントを本章で補足します。参考にしながら読み進めてください。

Gの設定

 また、Gは一つに絞る必要はありません。たとえば、これらの目標すべてが自社には適していると思えるなら、五つとも目標に設定してよいのです。もちろん、二つ、三つに絞ってもかまいません。

 PDCAをうまく運用するためのGのあり方は、P、D、C、Aのすべてに影響するので、慎重に、かつ大胆に決めるようにしてください。従来の慣習にとらわれたり、前例主義に陥ったりすると、何も変えることができなくなるので、要注意です。