ウォール街Photo:PIXTA

米株式相場の流れは、金融引き締め開始を嫌う中間反落の途上にある。そこに、ウクライナ地政学リスクの波紋も重なる。ただし、1月のように売り逃げを模索する段階は過ぎた。3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)へ向けて、短期投資、時間分散投資を経て、その後の業績相場への本格出動にもそろり目線を進める段階かと構えている。中間反落の状況を中間レビューする。(田中泰輔リサーチ代表 楽天証券グローバルマクロ・アドバイザー 田中泰輔)

米株式は金融引き締めへの
転換を嫌った中間反落の途上

 米国株式市場は、2022年明けから、1年9カ月続いた金融相場からの「中間反落」期に入っている。金融相場とは、景気下降局面にFRB(米連邦準備制度理事会)が金融緩和を進めることで、低金利あるいは潤沢なマネー供給を背景とする株高である。

 やがて景気が回復局面に入っても、金融緩和が継続する間は金融相場も続く。しかし、FRBがそろそろ金融緩和を解除し、金融引き締めへ移行する前後に、金融相場で含み益を膨らました投資ポジションの売り逃げが連鎖し、相場は大きめの調整場面を迎える。これが中間反落だ。

 中間反落は、金融緩和が極まったところで、引き締め転換を嫌っての相場調整であり、金融引き締め効果が実際に表れるステージではない。このため、一般論として、株式相場にとっては中程度のリスクと位置づけられる。

 下のグラフで、米主要株式指数の2020年春先からのコロナ禍大金融相場における上昇幅と対比した下落幅から、顕在化したリスクのほどを実感できるだろう。

 典型的な景気サイクルでは、その後も景気拡大が進み、企業業績は好調で、利上げが進んでも株高という局面が来る。これを業績相場と呼ぶ。

 業績相場は、金融引き締め下の金利が景気中立水準を超える辺りから雲行きが怪しくなり、順当には、高金利に圧迫された逆金融相場、景気・業績悪化に伴う逆業績相場と連なる下落局面になる。中間反落よりはるかに高リスクと心得たい。

 現時点は、FRBが3月FOMC(米連邦公開市場委員会)から利上げを開始するかという場面の、絵に描いたような中間反落の渦中で、下落第1波を1月に終えたところだ。

 そして、いずれ利上げと株高が並走する業績相場に向かうだろうと、その可能性をうかがっている。つまり、さらなる下落リスクを警戒する一方、業績相場にどうつなぐかの勝機も思案する、両にらみの頃合いに差しかかっている。

 もっとも、今般の株式サイクルには考慮すべき特殊事情が多い。次ページからその特殊事情を解き明かす。