「社内プレゼン」は、ビジネスパーソンにとって必須のスキルです。どんなによいアイデアがあっても、組織的な「GOサイン」を得なければ一歩も前に進めることができません。そのためには、説得力のあるプレゼンによって決裁者を説得する技術が不可欠なのです。
そこで役立つのが、ソフトバンク在籍時に孫正義氏から「一発OK」を何度も勝ち取り、独立後、1000社を超える企業で採用された前田鎌利氏の著書『完全版 社内プレゼンの資料作成術』(ダイヤモンド社)です。
本書では、孫正義氏をはじめ超一流の経営者を相手に培ってきた「プレゼン資料」の作成ノウハウを、スライド実例を豊富に掲載しながら手取り足取り教えてくれます。読者からは「大事なプレゼンでOKを勝ち取ることができた」「プレゼンに対する苦手意識を克服できた」「効果的なプレゼン資料を短時間で作れるようになった」といった声が多数寄せられています。
本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、社内プレゼンで「一発OK」を連発する人と、「NG」「やり直し」が多い人の、根本的な認識の違いについて解説します。

プレゼンで「一発OK」を連発する人と、<br />「却下」「やり直し」が多い人の“根本的な違い”写真はイメージです。Photo: Adobe Stock

なぜ、「伝わらないプレゼン」をしてしまうのか?

 プレゼンテーション(Presentation)とは何か?

 英和辞書を見ればわかるとおり、「発表、提示」という意味をもつ言葉です。「何を当たり前のことを……」と思われるかもしれませんが、実は、ここに注意すべき“落とし穴”があります。

 というのは、プレゼンを「自分の主張やアイデアを発表、提示すること」と考えるがために、効果的なプレゼンができなくなってしまうことが多いからです。

 例えば、技術部門の社員が自分のアイデアを正確に提示するために、技術部門出身ではない役員を相手に、専門的なことを「あれもこれも」と伝えるとどうなるでしょうか?

 専門的な知識のない役員にとっては、「よくわからないプレゼン」にしかならないでしょう。そして、せっかくのアイデアが理解されず、なかなか役員の承認を得られない結果を招きかねないわけです。

 もちろん、プレゼンを「自分の主張やアイデアを発表、提示すること」という意味で理解するのが間違っているわけではありません。しかし、そのような認識でいると、ひとりよがりなプレゼンをするという“落とし穴”にはまってしまう恐れが高いのです。

社内プレゼンの「5つのプロセス」

 では、どう考えればいいのでしょうか?

 この問題について考えるためには、「社内プレゼンとは何か?」を理解しておく必要があります。【図1-1】をご覧ください。

プレゼンで「一発OK」を連発する人と、<br />「却下」「やり直し」が多い人の“根本的な違い”

 ここに示しているように、社内プレゼンの多くは、次の5つのプロセスを辿ります。

1 アイデアを考える
2 プレゼンをする
3 決裁者などの「理解・納得」を得る
4 決裁者が「意思決定」をする
5 組織として実行する

 図示したように、この5つのプロセスは一度で完結するわけではなく、何度も繰り返されるものです。

 例えば、プレゼンで認められた事業アイデアがうまくいけば、その事業をさらに伸ばしていくための施策を提案する必要があるでしょう。あるいは、その事業が失敗に終わった場合には、その失敗の原因を明らかにしつつ、新たなアイデアを提案することが求められます。

 組織のなかで仕事をするとは、この1~5のプロセスを何度も繰り返すことと言ってもいいでしょう。要するにPDCAサイクルを回し続けるということですが、「社内プレゼン」がその要のひとつになっているということです。

「理解・納得」の深さにフォーカスする

 そして、このサイクルを回す最大のエンジンとなるのが、3の「決裁者などの理解・納得を得る」というプロセスです。なぜなら、決裁者が「理解・納得」すれば、ほぼ間違いなく4の「意思決定」において「GOサイン」を出してくれるからです。

 それだけではありません。もっと重要なのは、決裁者をはじめプレゼンを聞いていた関係者の「理解・納得」が深いものであればあるほど、その「提案」を成功させようとコミットメントを深めてくれることです。

 その結果、5の「組織的な実行」の熱量と精度が高まり、プロジェクトの成功確率も格段に上がります。たとえ失敗に終わったとしても、次のチャレンジに向かう「士気」は維持されていることでしょう。

 こうして、エネルギッシュに組織的なPDCAサイクルを回していくことこそが、組織活性化の最大のポイントであり、社内プレゼンにおいてめざすべき「ゴール」なのです。

 つまり、社内プレゼンにおいて最も重要なのは「決裁者などの理解・納得を得る」ことであって、プレゼン(発表、提示)はそのための手段にすぎないということです。

 だから、私はプレゼンを「自分の主張やアイデアを発表、提示すること」と考えるのではなく、「自分の主張やアイデアを相手に理解・納得してもらうこと」と認識すべきだと考えています。この認識を根底にもつことが、プレゼン力を磨く第一歩なのです。

(本稿は、『完全版 社内プレゼンの資料作成術』より一部を抜粋・編集したものです)