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スターバックスの生みの親
ピーツに学ぶ拡大戦略の“質”

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第60回】 2009年9月9日
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スターバックスの創業者たちがピーツで手ほどきを受けたのは有名な話。日本での知名度は低いが、アメリカでは最も尊敬を集めるコーヒー・チェーンの一つである。

 コーヒー・チェーン、ピーツ(Peet's Coffee & Tea)の店内に足を踏み入れると、そこが大人の世界であることがすぐ分かる。濃い茶色を基調にした落ち着いたインテリア、礼儀正しく椅子に座る人々・・・そこに深くローストされたコーヒーの香りが加わる。放課後にたむろしている高校生も、ソファにだらしなく座っている若者も見かけない。チェーン・ストアーとはいえ、ピーツにはコーヒーを愛するお客だけが入店を許される雰囲気が漂っている。

 日本での知名度は高くない。しかし、アメリカ、特にカリフォルニアには「ピートニック」と呼ばれる人々すらいる。ビートニク(ビート族)をもじった言葉だが、ヒッピー・ムーブメントの発祥の地と同じバークレーから生まれたピーツ・コーヒーの熱狂的なファンのことを指す。彼らは、スターバックスを始めとしたコーヒー・チェーンがどんなに広がっても、ピーツに通い続ける忠実なる固定客だ。

 実は、ピーツ・コーヒーはスターバックスの生みの親である。

 ピーツが創業したのは1966年。オランダで育ったアルフレッド・ピートがカリフォルニア大学バークレー校のキャンパス近くに小さなコーヒー・ショップを開店した。ピートはコーヒー商を営む一家に育った。第二次世界大戦後に移住したアメリカで、人々が飲んでいるコーヒーが美味しくない。これに業を煮やして、自ら店を開いたのである。

 薄いアメリカンの代わりにここで出されたのは、最高級の豆を濃い目にローストし、丁寧に入れたコーヒーだ(現在、店では20種類近いブレンドを用意し、コーヒーを焙煎する間もコーンの中でコーヒー粉を混ぜて香りを抽出するなど、手作り感の強いコーヒーを出すことで知られている)。そうした奥行きのあるリッチな味はすぐにクチコミで広まり、この店はローカルなコーヒー好きのたまり場になったのである。

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瀧口範子 [ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。


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