「一大ROEブーム」は何をもたらしたか

 2014年以降のスチュワートシップ・コード(SSコード)やコーポレートガバナンス・コード(CGコード)、伊藤レポートを端緒として、日本では一大ROEブームが起きた。東京証券取引所がROEに銘柄選定の重きを置いたJPX日経インデックス400の公表を2014年から開始したことも重なり、ほぼ毎日のようにROEに関するなんらかの記事が『日本経済新聞』に記載されるような時期も続いた。

 実際に新型コロナ感染症が発生する前の2018年度まで、日本企業のROEの平均値は8%を超えていたのだから、一連の取り組みが大きな成果をもたらしたことは間違いない。機関投資家が日本企業に求める平均的な投資リターン(株主資本コスト8%)を日本企業はついに上回ったということだ。

 そしてこれは、金融庁や東京証券取引所によるCGコードやSSコードが存在する限り、もはやブームではなく、仕組みとして確立されたROE重視の経営ととらえるべきだろう。後戻りはもうないはずだ。

 また、ROEはデュポンシステムによって3つの要素に分解して理解し、計画し、実行できる。ROEを経営指標として掲げる企業があった場合には、これら3つの要素について具体的な施策を語っているのか、3つの掛け算がきちんとROEの目標値に合致するのかを確認することによって、魂の込められたROE経営であるかの検証も可能である。