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週刊・上杉隆

カストロ後継者の不人気と、キューバ経済を呑み込む中国の存在

上杉 隆 [(株)NO BORDER代表取締役]
【第18回】 2008年2月21日
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 2006年7月、キューバの首都ハバナから東に約100km、同国屈指のリゾート地バラデロに向けて、筆者の乗った車はひた走っていた。かつてアル・カポネが別荘を建てるほど愛したその小さな半島までは、カリブ海に沿ってよく整備された国道が続く。

 車窓から眺める沿道には、南国特有の濃い緑が続くが、その合間に、製油所やニッケル鉱山などその景色に不釣合いな建物が点在している。そうした工場には、次々と大型トレーラーが吸い込まれていき、その屋根には、なぜか見覚えのある真紅の国旗がいくつもはためていた。

 2004年11月、キューバを訪問した中国の胡錦涛国家主席は、カストロ議長と会談し、16件もの経済協定を締結した。翌2005年には、石油生産協定を結び、新油田の開発を中国の技術供与によって再開し、それと並行するように中国製の自動車やバス、トラックがキューバ国内を走り回るようになったのだ。

 中国とキューバの関係は急速に緊密化しており、貿易額でも04年以降、輸出入とも対前年比で50%以上の伸びを記録している。筆者が訪れたのは、日本との直行便が廃止になり、替わって中国がキューバを席巻し始めた時期だった。ハバナや地方の工場には中国人の姿が目立ち始めていた。

カストロの後継者は
実弟ラウルで既定だが

 今週、キューバのカストロ議長が引退を表明した。1959年のキューバ革命以来、およそ半世紀にわたって、米国の膝元で、社会主義国家を率いてきた政治指導者がついに表舞台から姿を消すことになる。後継は、実弟のラウル・カストロ国家評議会第一副議長が既定路線となっている。

 筆者が訪問した直後、腸の手術を受けたカストロ議長は、チェ・ゲバラらとともに革命を戦い抜いたラウルへの権限委譲を事実上スタートさせていた。米国のジャーナリストの間では、今回のフィデルの引退によって、キューバ情勢に大きな変化がもたらされることはない、という見方で一致している。

 ただ、フィデルと違って、ラウルは米国との対話や外国資本への開放政策を目指すなど、穏健派として知られている。中国との関係強化もラウルの方針によるものだといわれている。よって、24日の人民権力全国会議で、「ラウル議長」が正式に誕生すれば、改革開放路線に弾みがつくのではと期待する向きもある。

 1年半前のカストロの最後の革命記念日演説を聴いた後、そうした「改革者」であるラウルの横顔を、取材中の食糧大臣に尋ねてみた。すると、大臣からは意外な答えが返ってきた。

 「ラウルには、フィデルのようなカリスマ性はまったくない。フィデルのように、医療制度改革や教育改革、そして農業改革などを成功させた手腕を彼には望まない。仮に、彼がフィデルの後継になるとしても、共産党による集団指導体制になる」

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上杉 隆 [(株)NO BORDER代表取締役]

株式会社NO BORDER代表取締役。社団法人自由報道協会代表。元ジャーナリスト。1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局記者、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者、フリージャーナリストなどを経て現在に至る。著書に『石原慎太郎「5人の参謀」』 『田中真紀子の恩讐』 『議員秘書という仮面―彼らは何でも知っている』 『田中真紀子の正体』 『小泉の勝利 メディアの敗北』 『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』 『ジャーナリズム崩壊』 『宰相不在―崩壊する政治とメディアを読み解く』 『世襲議員のからくり』 『民主党政権は日本をどう変えるのか』 『政権交代の内幕』 『記者クラブ崩壊 新聞・テレビとの200日戦争』 『暴走検察』 『なぜツイッターでつぶやくと日本が変わるのか』 『上杉隆の40字で答えなさい~きわめて非教科書的な「政治と社会の教科書」~』 『結果を求めない生き方 上杉流脱力仕事術』 『小鳥と柴犬と小沢イチローと』 『永田町奇譚』(共著) 『ウィキリークス以後の日本 自由報道協会(仮)とメディア革命』 『この国の「問題点」続・上杉隆の40字で答えなさい』 『報道災害【原発編】 事実を伝えないメディアの大罪』(共著) 『放課後ゴルフ倶楽部』 『だからテレビに嫌われる』(堀江貴文との共著)  『有事対応コミュニケーション力』(共著) 『国家の恥 一億総洗脳化の真実』 『新聞・テレビはなぜ平気で「ウソ」をつくのか』 『大手メディアが隠す ニュースにならなかったあぶない真実』


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