あらゆる職種の中でも人気が低く、労働生産性が低いのが「営業」でした。しかし、そんな時代は終わりを迎えようとしています。成長著しい最先端企業は、「できる営業」に多額の報酬を払い、企業の成長エンジンに「営業」を据えています。では、どのように「できる営業」へと生まれ変わればいいのでしょうか? 2022年6月7日発売『NEW SALES』では、これまでの古い営業から脱却し、新しい営業「NEW SALES」に進化する方法を紹介しています。本連載では『NEW SALES』のエッセンスを紹介。「NEW SALES」を実践すればあっという間に「売れる営業」に生まれ変わります。

世界の中でも、日本だけが驚くほど遅れている!「営業職」の生産性があまりにも低すぎる3つの理由『NEW SALES』著者の麻野耕司さんが、日本の営業が生産性の低い理由を指摘した(Photo:竹井俊晴)

日本の「営業」だけなぜ生産性が低いのか?

 日本は、労働生産性が極めて低い。

 これはかねてから課題として取り上げられてきました。ですが、その中でもとりわけ、「営業」の生産性の低さは深刻です。

 マッキンゼーが2021年に公開したレポート「日本の営業生産性は何故低いのか?」によると、ほぼ全業種で、日本の営業ROI(投資利益率)がグローバル水準を下回ってしまっていることが指摘されています。

世界の中でも、日本だけが驚くほど遅れている!「営業職」の生産性があまりにも低すぎる3つの理由

 営業担当者の時間配分を見ても、多くの人が商談の準備に時間を取られており、顧客との商談には、仕事全体の10~25%程度しか時間を割けていません。

世界の中でも、日本だけが驚くほど遅れている!「営業職」の生産性があまりにも低すぎる3つの理由

 日本の「営業」の生産性が低い理由は主に3つあると、私は考えています。

①分業化の遅れ

 生産性の向上は、分業と共に進んでいきます。例えば原始時代には、一人の人間が獲物を捉え、運び、食していました。しかし現代では、それらはすべて別々の人間が分担しています。このように分業は生産性の向上に必要不可欠です。

 日本企業の営業組織でも、「THE MODEL(ザ・モデル)」と言われる営業プロセスモデルが少しずつ普及しています。

「THE MODEL(ザ・モデル)」では、これまで営業担当者が一人で進めてきた「顧客リストの作成→アポイントの獲得→新規顧客への提案・クロージング→既存顧客のフォロー」というプロセスを、次のように分けていきます。

・マーケティング担当 顧客リストの獲得
・インサイドセールス(内勤営業)担当 アポイントの獲得
・フィールドセールス(外勤営業)担当 新規顧客への提案・クロージング
・カスタマーサクセス担当 既存顧客のフォロー

 営業プロセスを分割し、それぞれの工程のプロフェッショナルを育てていくのです。プロ野球の投手が、先発・中継ぎ・抑えと役割を分担するように、営業も工程ごとに役割を分けることで習熟度を高め、効率的かつ効果的に営業活動ができるようになります。

 「THE MODEL(ザ・モデル)」で語られてきたのは、あくまで営業プロセスの分業化です。

 しかし私は、営業活動に携わるラインの担当者だけを役割分担するのではなく、仕事をサポートするスタッフについても同じように役割を分けるべきだと考えています。

 アメリカの企業は、日本よりも営業部門に多くのスタッフを配置しています。具体的には、次のような役割を設置しています。

・オペレーション担当 営業プロセスを標準化し、CRM(顧客情報管理)やSFA(営業支援システム)などを用いて管理
・コンテンツ担当 営業の資料や動画を作成・共有することで、営業プロセスの推進を支援
・育成担当 営業ノウハウを提供することで、営業担当者を育成

日本企業ではこうした分業化が進んでいないことが生産性低下の要因になっています。

②属人化の浸透

 日本はアメリカに比べて、労働市場の流動性が低く、転職する人が少ないという状況が続いていました。そうした営業組織においては、何か分からないことがあっても、「あの人に聞けば良い」と考えてしまいがちです。

 その結果、顧客情報がきちんと引き継がれずに商談機会を逸してしまったり、営業資料や営業ノウハウが適切に共有されないという状況がはびこってしまいます。

 一方で、アメリカは労働市場の流動性が高く、転職する人も多かったため、顧客情報や営業資料、営業ノウハウを組織として蓄積・共有していくことに力が注がれていました。それらがアメリカの営業組織の方が再現性を持って営業活動を進めることができ、生産性が高くなっている一因になっています。

③デジタル化の遅れ

 営業活動はデジタル化により効率と効果を向上させることができます。

 具体的には、CRM(顧客管理システム)やSFA(営業支援システム)では顧客管理・商談管理を、MA(マーケティングオートメーション)ツールでは見込顧客の獲得を、セールスイネーブルメントツールでは顧客への提案をデジタル化することができます。

 しかし、こうしたデジタル化に関して、日本企業の営業組織は非常に遅れています。

 CRMの普及率はアメリカでは74%ですが、日本はいまだに28%にとどまっているというデータもあります(出典はこちら

 デジタル化の遅れも、日本の営業生産性が低い水準に留まる大きな要因です。

 だからこそ、日本の営業組織は「分業化の遅れ」「属人化の浸透」「デジタル化の遅れ」といった課題の解決に注力し、営業生産性を向上させていく必要があるのです。