痩せたい、熟睡したい、賢くなりたい、ストレスに強くなりたい…。人類の生活環境が激変するなかで、現代人はかつてなく多様な悩みを抱えるようになった。本連載では、全米で話題沸騰中、国内では本年3月に発売された書籍『EAT 最高の脳と身体をつくる食事の技術』の内容から、“食に関する最新の知見”にもとづく有益な情報をお伝えしていく。

「スッと入眠できて、しっかり熟睡できる」おすすめ栄養素ベスト3Photo: Adobe Stock

安眠へと導く栄養素たち

 世界一眠りにつきやすいルーティンを考案しても、栄養が偏るだけで深刻な不眠に陥りかねない。

 そうならないようにするために、安眠に導くと実証されている大事な栄養素を日々摂取することを心がけてほしい。

トリプトファン

 トリプトファンは、食事を通じて摂る必要のある9つの必須アミノ酸のひとつであると同時に、良質な睡眠の土台を築く重要な物質でもある。

 トリプトファンが不足するとレム睡眠で乱れが生じ、トリプトファンレベルが改善すると夜間に目覚めることが減り、起床後の覚醒状態が向上する、との研究が『ニュートリエンツ』に掲載されていた。

 睡眠ホルモンとして知られるメラトニンの産生にはセロトニンが欠かせず、セロトニンの産生にはトリプトファンが欠かせない。

 私たちの身体は、大量のトリプトファンを必要としているのだ。

 トリプトファンの優れた供給源には、鶏肉、ターキー、ロブスター、卵、チーズ、豆腐、チョコレート、ホウレン草、カボチャのタネ、ピーナッツ、スピルリナなどがある。

ビタミンB6

 ビタミンB6は、トリプトファンからセロトニンが産生される工程に欠かせない物質のひとつで、セロトニンとメラトニンの両方の産生を支える立役者だ。

 体内のシステムで騒ぎが起きると、この必須ビタミンが身体のストレス反応を調節し、神経系をなだめてくれる。

 ビタミンB6の優れた供給源には、ヨーグルト、サーモン、マグロ、卵、鶏レバー、ヒヨコ豆、ホウレン草、サツマイモ、アボカドなどがある。

グリシン

 グリシンもまた、睡眠にとってとりわけ有効なアミノ酸のひとつだ。

 科学ジャーナル『ニューロサイコファーマコロジー』に掲載されていた研究から、グリシンにはノンレム睡眠の質を高め、入眠後の覚醒を減らす(つまりは中途半端に目を覚ます回数が減る)効果があるとわかった。

 グリシンの優れた供給源には、牛肉、鶏肉、ターキー、サーモン、ピーナッツ、キヌア、スピルリナ、ブラジルナッツなどがあり、とりわけ骨を煮込んだスープに豊富に含まれる。

 また、骨スープに含まれるコラーゲンには体温調節をサポートする働きがあり、夜間の中核体温を下げて睡眠サイクルを改善する一助となる。

 ベッドに入る1時間ほど前にカップ1杯の温かい骨スープを飲むことを、リラックスタイムの儀式に加えることをお勧めしたい。