ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
論争!日本のアジェンダ

浜田宏一・内閣官房参与 核心インタビュー
「アベノミクスがもたらす金融政策の大転換
インフレ目標と日銀法改正で日本経済を取り戻す」

【第15回】 2013年1月20日
著者・コラム紹介バックナンバー
previous page
6
nextpage

――インフレ期待が大きく醸成されると、長期金利が高騰するのでないかと心配する声も多いですが……。

 ノーベル経済学者のマンデルは、期待インフレ率が上がるほどには国債の金利が上がらないことを証明しています。

 実質金利は名目金利から期待インフレ率を引いたものですから、金融緩和によって名目金利が一定に抑えられている環境では、期待インフレ率が上がると実質金利は下がります。よって、その影響が名目金利に多少ハネ返って来たとしても、結果的に実質金利が下がって、投資し易い環境になることは変わらず、景気が刺激されることになります。

 重視すべきは、名目金利ではなく実質金利なのです。たとえば、我々が住宅ローンを組んで家を購入するときも、返済時にいくら返せばいいかの指標になるのは実質金利なのですから。

名目賃金は上がらないほうがよい
その理由はあまり理解されていない

――では、こうした金融政策をやれば、経済はどのような経路で上向くことが考えられますか。デフレから脱却して「名目成長率」が上がり、それがどう「実質成長率」の上昇に結び付いて行くのでしょうか。

 物価が上がっても国民の賃金はすぐには上がりません。インフレ率と失業の相関関係を示すフィリップス曲線(インフレ率が上昇すると失業率が下がることを示す)を見てもわかる通り、名目賃金には硬直性があるため、期待インフレ率が上がると、実質賃金は一時的に下がり、そのため雇用が増えるのです。こうした経路を経て、緩やかな物価上昇の中で実質所得の増加へとつながっていくのです。

 その意味では、雇用されている人々が、実質賃金の面では少しずつ我慢し、失業者を減らして、それが生産のパイを増やす。それが安定的な景気回復につながり、国民生活が全体的に豊かになるというのが、リフレ政策と言えます。

 よく「名目賃金が上がらないとダメ」と言われますが、名目賃金はむしろ上がらないほうがいい。名目賃金が上がると企業収益が増えず、雇用が増えなくなるからです。それだとインフレ政策の意味がなくなってしまい、むしろこれ以上物価が上昇しないよう、止める必要が出て来る。こうしたことは、あまり理解されていないように思います。

previous page
6
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

経営戦略最新記事» トップページを見る

注目のトピックスPR

話題の記事


論争!日本のアジェンダ

社会保障と税の一体改革、消費税増税、エネルギー問題、TPPなどなど、日本はいま、これからの「国のかたち形」を決める大テーマに直面している。そこには絶対的に正しいという回答はない。だからこそ、甲論乙駁の議論を紹介し、我々がどのような選択をしていくべきかを考える。

「論争!日本のアジェンダ」

⇒バックナンバー一覧