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「宝島」か、それとも「幻影」か?
自動車各社が活路求める中国の“落とし穴”

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第75回】 2009年4月28日
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 “20世紀最大の産業”である自動車産業の苦境が続いており、主要国は一斉に自動車産業の救済に走っている。

 そんななか、すでに自動車購入に手厚い公的支援が提供され、一時的に販売台数がリバウンドしている国もある。しかし、世界経済の下落が続く現在、そうした公的支援の効果は限定的だ。

 「最大の需要国=米国」での販売台数の低迷が続いていることもあり、米国のGMやクライスラーをはじめ、わが国や欧州の有力自動車メーカーも軒並み、厳しい経営環境の中で、収益力の低下に苦しんでいる。

 すでに、スウェーデンの有力メーカーであるサーブなどは、事実上の破綻に追い込まれているほどだ。

 自動車産業の低迷の背景には、「金融危機による世界的な景気後退」という短期的な要因に加えて、昨年前半まで続いた原油価格の高騰や、人々の環境問題に対する意識の高揚という構造問題がある。

 短期間で構造的な問題を解決することは困難であり、自動車産業の“苦悩の日々”は今後も続くことが予想される。

 だが、自動車産業を取り巻くこのような厳しい経営環境の中で、先行きの明るさを予感できる要素が、2つある。

 1つは、環境にやさしい新型の“ハイブリッドカー”の売れ行きが好調なことだ。環境対策の目玉の1つとして、各国政府が税制支援や補助金の提供を行なっていることもあり、販売状況は好調のようだ。

 ハイブリッドカーに関して高い技術を持つわが国メーカーなどにとっては、大きな追い風になる可能性もある。

 もう1つは、中国市場の台頭だ。中国では、経済成長に伴う所得の上昇を背景に、個人の自動車取得が伸びている。すでに中国の今年1月の自動車販売台数は約79万台に達し、66万8000台だった米国を追い抜いて、短月ベースで、世界最大の自動車市場となった。

 こうした傾向は今後も続くと見られ、今年1年をとっても、中国が「世界最大の自動車市場」の地位につくことは、間違いないだろう。それに伴い、世界の有力メーカーは、当面、米国から中国へと主戦場を移して、「生き残りのための戦い」を続けることになるはずだ。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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