乳房のタイプによって検診の精度が変化

 マンモグラフィ検査でも、乳房のタイプによってはがんを見つけにくいケースがあります。そもそも乳房は脂肪と乳腺実質で構成されますが、その割合には個人差があり、次の四つに分類されます。

脂肪性……乳房の全体がほぼ脂肪で構成されている状態
散在性……脂肪の中に乳腺実質が散在している状態
不均一高濃度……乳腺実質内に脂肪が散在して不均一な状態
極めて高濃度……乳腺実質内にほとんど脂肪が混在しない状態

 マンモグラフィの画像では、乳腺実質は白く写ります。ところが乳腺腫瘍も同じように白く写るため、あたかも雪原で白兎を探すような状態になり、乳腺実質の割合が多いタイプの乳房の場合、乳腺実質と乳腺腫瘍が判別しにくいのです。

 この四つの乳房のタイプのうち、マンモグラフィ検査による判定が難しい不均一高濃度と、極めて高濃度の二つのタイプを併せて「デンスブレスト(高濃度乳房)」と呼んでいます。デンスプレストは日本人やアジア人の、特に20代から40代に多く見られます。

 デンスプレストの人は、がんが発見できない偽陰性や逆にがんではないのに要検査となる偽陽性になることもあり、マンモグラフィとエコー検査の組合せが推奨されています。

早期発見はまず自分の乳房を知る事から

 とは言え、最も望ましいのは、やはり早期発見です。その為に罹患率が増加し始める30代に入ったら乳がんの定期的な検診が重要です。また、普段から自身の乳房のイメージや感触などを、自分の感覚に焼きつけておくことはさらに重要です。最近は、検診において「ブレスト・アウェアネス」といって、「乳房を意識する生活習慣」を持つよう提唱されています。これは、普段から乳房を意識して、自らの乳房の変化を気にかける生活をするというもので、4つのポイントがあります。

(1) 自分の乳房の状態を知る
(2) 乳房の変化に気をつける
(3) 変化に気づいたらすぐ医師に相談する
(4) 40歳になったら2年に1回乳がん検診を受ける

 日頃から乳房を意識しわずかな変化にも気づければ、いち早く医師に相談できますし、早期発見、早期治療にもつながります。ステージIまでであれば100%の治癒率が望めますし、ステージIIであっても95.9%となっているのです。

 もっとも最近では、血液や尿、唾液などの体液から、がんの超早期発見や詳細な遺伝情報を得る「リキッドバイオプシー」による診断法の開発が進んでいます。こうした技術が進展し、遺伝子レベルで正確な評価が下せるようになれば、近い将来的、手術を回避できる可能性も出てくるでしょう。