人口の増大が続き、若い人口構造を持つ国では、国が不安定で民主化が進みにくい、という見方があります。逆に、少子高齢化が進んだ国は安定的で、民主的なプロセスが進みやすいということも知られています。しかし、これを機械的に当てはめることがどれだけ危険な判断か、人口減少が続くロシアによるウクライナ侵攻で明らかになりました。2022年、世界人口は80億人を突破したと国連が発表しました。70億人からわずか11年、このまま人間が増えると、環境問題、食料問題をはじめ「地球は大丈夫なのか?」と懸念する声にあふれています。人口動態の変化は何を示唆するのでしょうか?『米国防総省・人口統計コンサルタントの 人類超長期予測』(ジェニファー・D・シュバ著、ダイヤモンド社刊)を刊行したばかりの、米国防総省・元人口統計コンサルタントの見方を紹介します。(訳:栗木さつき)

ロシアの少子高齢化Photo: Adobe Stock

国防長官「もうロシアに気を揉むことはない」

 ロシアもまた人口増加率がマイナスである(つまり人口が縮小している)ことがよく知られている国だ。

 そして、ここで肝心なのは、1年に3%の割合で人口増加が続いているコンゴ民主共和国の対極にあるということだ。ロシアの高齢化は国家の安全保障にとって、いわば終焉の前兆だと、政策立案者のあいだでは考えられている。

 私が国防総省(ペンタゴン)で働いていた2000年代半ばには、その「不吉な人口統計値」を理由に、ロシアに未来はないと書きたてる人も多かった。

 今日の中国と同様、当時の出版物には「ロシアの人口減少爆弾」とか「信じ難いほど縮小する人口」といった見出しが躍ったものだ。もちろん、これはロシアの人口が「大減少」していたさなかのことだった。

 21世紀になって最初の5年間で、ロシアの人口は0.4%縮小した。つまり、1年間で実質50万人近く減ったことになる。

 実際、2009年、当時のロバート・ゲーツ国防長官は、こう記した。ロシアのことでもう気を揉む必要はない、人口統計値を見ればもうロシアの命運は定まっているのだから、と。

 これを読んだとき、あまりにも性急な結論だと思い、私は懸念した。中国の人口統計値に関するツイートを読んだときにも、やはり心配になったのだが。

 実際、当時から現在までを振り返ってみると、国の人口が減り、高齢化が進んでいるにもかかわらず、ロシアのリーダーたちは軍を近代化し、国防費を増やす判断を下してきたことがわかる。

 そしてまた、彼らはロシアの国境を越え、隣接する国(ウクライナ)や隣接していない国(シリア、イエメン)に力を誇示することもためらわない。これは高齢化や人口減少といった事態からは予測できなかったことだ。また、ロシアがデジタル化に力を入れているのも高齢化に対する適切な対応だ。

 ロシアは合計特殊出生率に関してはわずかながら改善を見せていて、人口減少のスピードを鈍化させている。人口の推移を評価するには、こうした点も考慮しなければならないのだ。