2023年銅相場「6000~1万ドル」のレンジ相場か、不透明感は弱まるも力強さ欠くPhoto:PIXTA

2022年後半に銅相場は一進一退の動きを続けた後、11月以降緩やかに上昇した。米中の景気の先行きに対する不透明感は弱まりつつあるが、23年の両国の景気は力強さを欠きそうだ。そうした経済動向を踏まえ、23年の銅相場を分析、予測する。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)

2022年9月から10月は世界景気の
先行き不透明感から一進一退

 世界景気の先行指標としても注目され、エアコン、自動車、建築物、発電設備など幅広い分野で利用される銅の相場は、2022年9~10月は一進一退で推移した後、11月以降、やや騰勢を強めた。

 一部では、遠くない将来に、22年3月にロシアのウクライナ侵攻を巡って需給逼迫(ひっぱく)懸念が高まった際に付けた1トン当たり1万845ドルの史上最高値を更新するとの見方も出ている。しかし、その趨勢(すうせい)は、先行き不透明感が強い米中の景気動向に左右されそうである。

 銅相場の主な動きを振り返ってみよう。9月1日は、財新とS&Pグローバルによる中国の製造業PMI(購買担当者景況指数)が市場予想を下回って判断基準の50を割り込んだこと、四川省・成都で住民2120万人を対象としたロックダウン(都市封鎖)が導入されたことなどが売り材料だった。

 米利上げ懸念などによる前日までの下落の反動や、エネルギー高騰に伴う銅供給抑制の可能性などから、8日は上昇した。インドネシアで銅、ボーキサイト、スズなどの未加工鉱石の輸出禁止に向けた計画があると報道されたこと、資源大手BHPグループがチリで操業する世界最大のエスコンディーダ銅山で、安全上の懸念から労組がストライキを実施する動きがあったこと、などが相場押し上げ材料だった。

 13日は下落した。8月の米国CPI(消費者物価指数)が上振れして、20~21日のFOMC(米連邦公開市場委員会)での0.75%の大幅利上げ観測が強まり、経済成長の鈍化や金属需要の減退につながった。

 23日は、英大型減税策を嫌気して英長期金利が急上昇したのに連動して米長期金利も上昇し、ドル高にもつながる中、銅は下落幅が大きくなった。29日は、LME(ロンドン金属取引所)がロシア産金属を取引銘柄のリストから外すことを議論する予定だと報道され、銅も含めてベースメタルが上昇した。