社会人になってキャリアアップを考えるとき、資格を取りたいと思うことがある。ところが、忙しくて勉強する時間がなかなか取れないし、勉強してもすぐに忘れてしまうといって敬遠しがちではないだろうか。そんなときにお勧めなのが『大量に覚えて絶対忘れない「紙1枚」勉強法』。著者が働きながら3年で9つの資格に独学合格したノウハウだ。紙1枚とペン1本あればできるシンプルな方法にもかかわらず、大量に覚えて絶対忘れない「忘れる前に思い出す」最強の仕組み。資格試験、大学受験、公務員試験、どんな試験も完全攻略。本稿では、本書より一部を抜粋・編集して、「紙1枚」勉強法とは何かについて紹介していく。(構成:長沼良和)

「紙1枚」勉強法Photo: Adobe Stock

過去問を勉強したのに試験で落ちる理由

 試験勉強をしている社会人の中には、「何度も過去問をやったのに試験で落ちてしまった」という人がいる。

 過去問とまったく同じ問題が出ることはないのだから、それは当たり前のことだ。

過去問の「点」だけを追っていてもある程度点はとれますが、合格点にはなかなか到達できません。大切なのは「点」ではなく「面」の知識です。(P.70)

 ひとつの問題から派生させて「周辺知識」を学ぶことで、「面」の知識にしていくことが、試験の合格には必須になる。

 試験に出る問題は、この「周辺知識」を問うものだ。それが「試験の傾向を掴む」ことを意味する。

過去問を勉強する「本当の意味」

 具体的に解説しよう。こちらは本書で紹介されている宅建士の過去問だ。内容については深く追わなくて良いので、考え方の参考として見てほしい。

平成26年問39
還付充当金の未納により保証協会の社員の地位を失った宅地建物取引業者は、その地位を失った日から2週間以内に弁済業務補償金を供託すれば、その地位を回復する。(P.71)

 この問題文は正しい文章だろうか? それとも、どこかに間違いがあるだろうか?

 正解は「間違いがある」。「2週間以内」ではなく「1週間以内」が正しい。

 過去問を解くだけでは、この知識を得るのみで次の問題に進むことになる。

 しかし、これでは勉強したことにならない。この問題は次の試験には出されないからだ。

 出題されるのは、この問題の「周辺にある知識」だ。

過去問は周辺知識を確認するためのもの

 では、周辺知識を学ぶにはどうしたら良いのだろうか。

 まずは、この問題の中に登場する「用語」に着目していく。

 たとえば、「還付充当金」について深掘りするとしよう。想定できる質問をできるだけ多くあげる。

 ・還付充当金とは何か?
 ・還付充当金は本来いつまでに払うのか?
 ・還付充当金はどこに納付するのか?
 ・還付充当金はなぜ納付しなければならないのか?

 「還付充当金」という用語ひとつ見るだけで、ざっとこれだけの疑問が出てくる。

 これらの疑問のひとつひとつについて、参考書から掘り下げることで、分厚い周辺知識を得られる。

 同様に「弁済業務補償金」という言葉も掘り下げられる。

 この「掘り下げの積み重ね」によって「面」の知識がより強化される。

単に正誤を確かめるだけではなく、周辺知識を確認する。これが過去問の活用です。(P.74)

 周辺知識をしっかり深掘りしていくと、時間がかかってしまう。急いで先に進みたくて焦るかもしれない。

 しかし、この時間への投資は大きなリターンをもたらしてくれる。

 じっくり時間をかけて丁寧に周辺知識を学んでいこう。

周辺知識は問題集の解説欄に書き足す

 周辺知識を得たら、「問題集の解説欄」に書き込もう。

 なぜ、ノートではなく問題集の解説欄に直接書くのか。

 その理由は問題集を繰り返すたびに、自分で集めてきた周辺知識も同時に読み返すことになるからだ。

 読み返すたびに、周辺知識も一緒に思い出すことになって記憶に定着しやすくなる。

過去問とは、いわば木の枝です。その枝を軸にして、葉っぱという「周辺知識」をどんどんつけていき、枝とセットにして覚える作戦なのです資格の試験問題は、過去問の周辺知識がほとんど。周辺知識を固めれば、必ず合格点はとれます(P.76)

 中には、予想問題集を使って周辺知識を得ようとする人もいる。

 しかし、それでは何冊も予想問題集を買ってきて勉強をしなければならなくなるので、余計時間がかかってしまうことになる。

大切なことは、どの教材で学習するかではなく、どうやって学習するかです。(P.76)

 一冊の問題集を使ってじっくり周辺知識を蓄積していく方が、効率的かつきちんとした知識が身に付くのである。