日常会話やメール、文書、プレゼン……自分の伝えたいことがうまく伝わらない、と思うことはないだろうか。そんな人にぜひ読んでほしいのが、2023年2月15日発売になった『ひとこと化──人を動かす「短く、深い言葉」のつくり方』(坂本和加著)だ。著者の坂本氏は「カラダにピース。」「行くぜ、東北。」「WAON」など数々の名コピー、ネーミングを生み出している。本書では、坂本氏が20年以上のキャリアで身につけた、「伝える」ための思考法、技術を余すところなく紹介。今回は本書の発売を記念して特別に一部内容を再編集、抜粋して紹介する。

とてつもなく仕事がデキる人は相手の「どこ」をほめる?Photo: Adobe Stock

「ほめること」を探すのは「ちがい」を探すこと

普段の生活でも、ほめるポイントを見つけられることは、それだけでかなりのアドバンテージになります。

ヤバイやスゴイではなく、「どう」ヤバイ、「何が」スゴイと説明できたら、それがそのままコピーライティングの仕事に直結するくらい、とても価値があります。

日本人の国民性は、長らく「同じである」ということに価値を見いだしてきました。

そのせいか、「ちがう」だけで目立ちます。

それどころか“出る杭”になると、目障りだと叩かれる。

私たちはなぜか他人の長所よりも、真っ先に「ちがい」や「短所」に目がいくものです。

同じであることはいいこと、という前提だからこそ、「ちがい」をネガティブに捉えてしまい、目につきやすいのかもしれません。

けれど、広告の世界に求められるのはまったく真逆のスキルです。
「同じじゃないって、いいよね」です。

それはとてもポジティブなものの見方です。

「同じじゃない」を、ポジティブに捉える

同じじゃない。これだけを切り出せば、ネガティブにもなります。大切なのは、「いいよね」のほうです。

実は上の句はなんでもOK。

「笑顔が、いいよね」は普通ですが、「怒っている顔が、いいよね」も言葉を自由に羽ばたかせる世界では大いにアリです。

ツカミがキャッチーになる、というメリットも生まれます。もちろん、きちんと「なぜいいのか」を説明できることが大事です。

どんな人、どんなものにも必ずよいところがある

「同じじゃないって、いいよね」と思う反面、「同じって、いいよね」と思う生活者としての市井の自分もいます。
そういうわけで、ちがっても同じでも、結局どっちでも別に悪いことでもないよね、という話になります。

ネガティブなことでもポジティブに変換して捉える。

このような思考をくり返していくうちに、気づいたら私はとてもポジティブな人間になっていました。

世の中にこれだけ言葉があふれています。どうやったら読んでもらえるのかに頭を悩ませる方が多いように思いますが、私から見ればそれは手法にすぎません。

そうではなく、ゴールは「伝えたいほんとうの想いが、正しく伝わる」こと。

どんな商品もサービスも会社も、ひいてはあなたにも、必ず誰かに伝えたいよいところがあるはずですし、それさえ見つけてあげればゴールはすぐそこだったりするのです。

「同じじゃないって、いいよね」目線は、今すぐ簡単に生活に加えられます。
そしてポジティブ思考につながっていきます。

同じってそんなに価値ないよね? という発想に至ったなら、あなた自身がほんとうの多様性、ダイバーシティを身につけたということ。素敵なおまけつきです。ぜひ試してみてください。

(*本稿は『ひとこと化──人を動かす「短く、深い言葉」のつくり方』より一部抜粋、再編集したものです)

坂本和加(さかもと・わか)
合同会社コトリ社代表
文案家(コピーライター)/クリエイティブディレクター
大学を卒業後、就職氷河期に貿易商社へ入社。幼少期から「書くことを仕事にしたい」という漠然とした思いがあり、1998年にコピーライターに転職。数社の広告制作会社を経て、2003年に一倉広告制作所に就職。2016年に独立し、現在は合同会社コトリ社代表。
主な仕事に、「カラダにピース。」「行くぜ、東北。」「WAON」「イット!」「健康にアイデアを」「こくご、さんすう、りか、せかい。」などがある。受賞歴に毎日広告デザイン賞最高賞ほか多数。著書に『ひとこと化──人を動かす「短く、深い言葉」のつくり方』(ダイヤモンド社)、『あしたは80パーセント晴れでしょう』(リトルモア)ほか。東京コピーライターズクラブ会員。日本ネーミング協会会員。