「卵を一つの籠に盛るな」投資でリスク分散の重要性が一段と増している理由Photo:PIXTA

グローバルな経済や政治が大いなる転機を迎えている今、資産運用において、リスク分散の重要性が一段と増している。長期的な資産価値保全のために、広く分散された投資ポートフォリオを構築する必要がある理由を解説した。(クレディ・スイス証券チーフ・インベストメント・オフィサー 松本聡一郎)

グローバルな経済や政治が
大いなる転機を迎えている

「卵を一つの籠に盛るな」。“It is the part of a wise man to keep himself today for tomorrow, and not venture all his eggs in one basket.”という「ドン・キホーテ」の一節から来るこの有名なフレーズは、投資の世界において、リスクを分散する重要性を教える言葉として広く知られている。

 世界の経済や政治のフレームワークが大いなる転機を迎えている今、資産運用におけるリスクの所在は、単に資産価格の振れの大小のみならず、より長期的な変化に求められるといえるだろう。

 歴史をたどり、極めて長期的な視点で見ると、資産のリターンは必ずしも平均に回帰するとは限らない。

 例えば、戦争がもたらす変化は顕著である。覇権国が疲弊し衰退した場合、その通貨や資産(株式、債券など)価値が回復できないケースがあるからだ。

 その意味で冒頭のフレーズは、資産全体のリスク(ボラティリティー)を抑制するため、値動きの異なる資産に分散するというより、資産価値を大きく失わないように、資産の対象そのものを広く分散して保有することを勧めているといえるだろう。