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グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50Photo: Adobe Stock

パレート分析とは?

 ビジネスにおける定量分析では、「物事を重要なものから処理する」「改善感度の大きいものから解決する」ということが重要な目的となります。

 そのための有効な手法がパレート分析です(かつてはABC分析と呼ばれるのが一般的でしたが、近年ではコスト分析手法としてのABC分析が登場したため、それと明確に区別するためにパレート分析と呼ばれることが増えました)。

パレート分析を理解するための図

 パレート分析は、数量の大きい項目・要素から順に並べ、累計も合わせて示します。

 各項目の順番だけでなく、累計が示されることにより、全体における重要性を知ることができるので、アクションプランを検討するときに役立ちます。

 たとえばパレート分析の結果、仮に、顧客100社中、上位15社で全売上高の90%を占めており、また売上高の大小とは関係なく顧客管理コストがどの顧客も同程度発生し、なおかつ経営上無視できない金額であったとしましょう。

 この場合、思い切って顧客数を削減し、優良顧客もしくは将来有望顧客に資源を集中することを考えてもよいかもしれません。

 実際にパレート分析を行うと、「顧客の上位20%で売上高の80%を占めている」、「営業担当者の上位30%で70%の粗利を稼いでいる」などのように、「20-80」のルール(あるいは「30-70」のルール)が読み取れるケースが一般的です。

 ただし、あらゆるケースに20-80あるいは30-70の比率が当てはまるわけではありません。

 企業や業界によっては、それが10-90の場合もあれば、40-60の場合もあります。

 ラフな目処として20-80を想定するのはかまいませんが、正確を期すのであれば、実データに基づいてパレート分析を行うことが望ましいと言えるでしょう。

事例で確認

 例えば日本の人口を47都道府県の上位から並べると、上位およそ20%にあたる9都道府県(都道府県の数としては正確には上位19.1%)で全人口の54%を占めています。

 上位およそ30%の14都道府県(正確には29.8%)について言えばそれが65%となります。

 ちなみに、面積で同じことをすると、上位9都道府県で47%、上位14都道府県で58%となります。

 この数字だけを見ると日本人の人口は思った以上に集中化していないように見えますが、実はここには錯覚があります。

 錯覚のポイントは、「都道府県の数」の上位20%としたところです。

 実は日本の人口は東京都や大阪府、神奈川県といった小さな面積の都道府県に偏っており、仮に都市別にパレート分析を行うと、上位20%の都市でもっと多くの人口を擁することがわかります(ご興味のある方は調べてみてください)。

 いずれにせよ、こうした分析は日本の人口政策や都市政策に大きなヒントを与えてくれることになります。

用いる場面
・売上げや利益に貢献している製品や顧客を見極めることで、マーケティングや営業戦略に活かしたり、資源配分の見直しの参考にする
・トラブルが主にどのような原因で生じているかを見極め、費用対効果の高い解決策につなげる
「パレート分析」を使うコツ・留意点
1.
パレート分析は実務でも有効な分析ですが、最終的な意思決定、特に製品や顧客の切り捨てに関しては、機械的な判断は避けるようにしてください。
全体に対する貢献度は少なくても、技術力強化や信用力強化など、その他の観点で企業経営に貢献していることも多いからです。
また、近年ではロングテール(パレート図の右側に来るような小さな要素)をコスト負担少なくキャッシュ化するビジネスモデルも生まれています。
デジタルファイル化された音楽などはその典型で、在庫のコストが極めて小さいため、わずかな売上げしかなくても十分に利益を上げうるのです(図表5-2参照)。
2.
売上げや粗利、不具合に関するパレート図は情報を得やすいため比較的容易に描けますが、さまざまなコストを差し引いた後の利益に関するパレート図は、製品別であれ、顧客別、チャネル別であれ、描くのは容易ではありません。
なぜなら、それぞれの要素ごとの利益を正確に算出することが難しいからです。簡便版でもいいので、ABC分析なども行うことで、信頼に足る分析とする必要があります。
ロングテールを理解するための図