英ポンドは170円台回復、英経済低迷もインフレ抑制が成功すればさらなる上昇へPhoto:PIXTA

英国経済はゼロ%近傍の成長が続いている。一方、物価と賃上げの高止まりが続き、さらなる政策金利の引き上げが予想される。通貨ポンドは金利高を受けて堅調に推移している。今後、インフレ抑制、景気軟着陸に成功すればさらなる上昇の公算が高まる。(第一生命経済研究所 主席エコノミスト 田中 理)

IMFの予測では23年の
英国はマイナス成長に

 主要予測機関の経済見通しを集計した最新のコンセンサス見通しによれば、2023年の英国はスウェーデンとともに主要先進国でマイナス成長が予想されている数少ない国の一つだ。

 IMF(国際通貨基金)が4月に発表した世界経済見通しでも、23年の英国は0.3%のマイナス成長が見込まれていた。英国経済の苦境の原因はどこにあるのか。

 英国はロシア産のガス供給に依存していないが、エネルギー消費に占めるガスの割合が高く、欧州を襲ったガス価格の高騰が経済を直撃した。物価高騰による家計の実質購買力の目減りや企業収益の圧迫が続いている。

 トラス前政権による昨年夏の大型減税発表後の金融市場の動揺を受け、後を継いだスナク政権が財政緊縮路線にかじを切ったことも、英国景気の足を引っ張っている。EU(欧州連合)からの離脱(ブレグジット)後の人手不足やEU向け輸出が低迷していることも、苦境に拍車をかけた。

 インフレ警戒で金融引き締めが強化されており、銀行の貸し出し基準の厳格化、住宅市況の軟化、求人件数の鈍化などにその影響が表れ始めている。

 次ページ以降、英国の景気、物価動向、通貨ポンドの行方について検証していく。