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原英次郎の「強い中堅企業はここが違う!」 トップに聞く逆境の経営道

あのマイケル・ポーター教授も認めた!
大洋薬品工業 新谷社長の競争戦略(後編)

原 英次郎 [週刊ダイヤモンド論説委員]
【第6回】 2009年7月8日
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大洋薬品の創業は、昭和5(1930)年と古い。しかし昭和40年代初頭に同社は経営危機に陥る。そのとき創業家と親しかった父・泰助氏によって、新谷重樹社長は再建ために同社に送り込まれた。

大洋薬品工業 新谷重樹社長

(新谷社長):大洋薬品(当時は中野薬品工業)は、薬局向けの製剤を売っていました。オヤジが創業者と親しかったので、昭和42(1967)年、24歳の時に、「行ってこい」と経理課長で送り込まれました。入った途端に、元帳を見てこれはつぶれるなと思い、オヤジに「支援はやめた方がよい」と言いました。そうしたらオヤジは「地元なのでそれはできん。お前やれ」と。販売会社の放漫経営が原因だったのですが、その年の暮れに、親会社であるわが社も実質的に倒産しました。

 その時、大阪にいたオヤジが飛んできて、全社員160人を集めて、「申し訳ない」と頭を下げて、解雇したのです。それからがオヤジの経営的なカンなのでしょうか、いったん解雇した従業員のうち60人を、再度集めました。メーカーだから、客はついているという読みだったのでしょうか。

 実際、全国の薬局から、おカネを出すのでモノを作ってくれという手紙が来たり、振り込みで前渡金を振り込んできたところもありました。ただし、生産するには、おカネが足りない。当時、私の兄弟は4人で、(新谷家の)グループ会社は5社あったのですが、当然、別会社なので、危ない会社にはおカネは貸してくれない。オヤジがポケットマネーから約1億円ほど貸してくれましたが、あとは銀行借り入れの保証人になってくれただけでした。その後、頑張ってオヤジからの借金は4年で返し、10年後には借金ゼロの会社になりました。

経営危機に陥った前後から、大洋薬品をめぐる製薬業界の経営環境は大きく変わり始める。環境変化をとらえて、新谷社長は経営の舵を切るが、そこには失敗もあった。だが、その失敗こそが、現在の礎となっている。

 昭和36(1961)年に、国民皆保険が実現しました。誰でも病院に行きやすくなったので、医科向けの医薬品が売れるようになった。そこで昭和48(1973)年に医療用医薬品の承認をとり始めました。我々は後発でしたが、ラッキーだったのは注射剤から入ったことです。それが今の地位に結びついている(前編参照)。

 もちろん製薬会社なので、新薬の開発は夢です。我々は、ある会社と共同して、鎮痛消炎剤であるスプロフェンの錠剤を、国内初の新薬として承認取得しました。ところが上市に向けて準備をしていたところ、すでにアメリカで発売されていた同じ成分の薬で側腹部痛の副作用が発現し、結局、国内では発売を断念せざるをえない状況となってしまいました。しかし、非常に効果の優れた薬物だったので、研究開発部門でこれを何とか生かすべく検討した。それで経口投与ではなく、患部に直接作用することを目的とした軟膏・クリーム剤を開発したところ、その副作用の懸念は払拭され、承認を取得し、上市することができました。

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原 英次郎 [週刊ダイヤモンド論説委員]

1956年生まれ、佐賀県出身。慶應義塾大学経済学部卒。
1981年東洋経済新報社に入社。金融、証券、エレクトロニクスなどを担当。
1995年『月刊金融ビジネス』、2003年4月『東洋経済オンライン』、
2004年4月『会社四季報』、2005年4月『週刊東洋経済』の各編集長などを経て、2006年同社を退社。
2010年3月ダイヤモンド・オンライン客員論説委員、2011年10月編集長、2015年1月より現職。
主な著書に『銀行が変わる?!』(こう書房)、『素人のための決算書読解術』(東洋経済新報社)。

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