国内名目GDPに4855億円*1の貢献
データが示すTikTokの現在地
TikTokは、もはや「若者のための娯楽アプリ」というくくりだけでは説明し切れない規模に成長している。
2025年3月に国内約1.8万人を対象に実施した利用率調査では、15～19歳で73.2％、20代で47.1％と若年層の割合が高い一方で、30代34.1％、40代28.3％と中高年層にも広がっていることが示されている*1。また全国15～69歳の約1万人を対象にした調査では、ユーザーの平均年齢が24年の37.9歳から、25年には39.2歳と、1年でも大きな上昇を見せた*2。
また、ユーザーがどの程度影響を受けているかを聞いた調査でも、TikTokは「世の中のトレンドの把握」や「商品・サービスの情報収集」といった行動の入り口として受け入れられており、実際、TikTokユーザーの33.9%はTikTokのコンテンツを見て商品やサービスを購入した経験があるという*1。
短時間で次々と情報に触れ、レビューや体験談にもすぐアクセスできる視聴環境が、ユーザーの日常の意思決定プロセスにまで入り込んでいるといえる。
33.9%のユーザーが、TikTokのコンテンツを見て商品やサービスを購入した経験がある。15〜19歳においては、その割合は約半数にも及ぶ（画像出典：マクロミルグループによる調査｜2025年6月発刊「TikTok Socio-Economic Impact Report〜日本における経済的・社会的影響〜」）拡大画像表示
社会的・経済的インパクトも無視できない。24年のTikTokの国内名目GDP（国内総生産）への貢献は4855億円*1に達し、雇用創出にも寄与しているとの報告がある。これは単なる「人気アプリ」の域を超え、経済圏として成長していることを示す指標といえる。
さらに、中小企業の国内名目GDPへの貢献額は1094億円*1とされ、規模や業種にかかわらず成果を生み出せる環境が整っていることが分かる。自社の認知拡大、採用強化、新規顧客獲得など、多様な経営課題に対して、TikTokというプラットフォームが具体的な効果を持っている事実は注目に値する。
年齢層の広がり、日常への浸透度、そして経済的インパクト――。これらのデータは、TikTokがすでに一部の若年ユーザーだけのプラットフォームではなく、生活者と企業を結ぶ重要な接点へと変貌したことを示している。
特に今、中小企業にとって、この環境は新しい成長機会となり得る。TikTokの特長を利用することで、認知の拡大だけではなく、採用・購買・ブランド形成にまで影響が及ぶ可能性があるからだ。
*1：マクロミルグループによる調査｜2025年6月発刊「TikTok Socio-Economic Impact Report〜日本における経済的・社会的影響〜」
*2：コンテンツビジネスラボ（博報堂DYホールディングスと博報堂の共同研究プロジェクト）による調査｜「コンテンツファン消費行動調査2025」
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認知度、フォロワー数がゼロでも勝てる
TikTok広告の構造的な特長
では、なぜTikTokはここまで広い年齢層に浸透し、企業活動にも影響をもたらし得るのか。
TikTok広告は、フィード上の動画と同じ形式で表示され、他のコンテンツと同じ感覚で視聴される点が特長だ。
つまり広告が“割り込む”のではなく、自然な動画として流れるため、視聴体験を妨げにくい。実際、毎週利用するユーザーの一定割合がTikTok広告を「面白い」と捉えているという調査結果もあり*3、広告がコンテンツとして受け入れられやすい環境が整っていることが分かる。
また、TikTokの配信最適化システムも特徴的だ。視聴完了率、リプレイ率、シェアやコメントといった数百のエンゲージメントを解析し、ユーザーが何に心を動かされたかを学習、ユーザーの「おすすめ」フィード上へ動画をレコメンド配信する。その結果、フォロワー数に依存せず、動画そのものの良さや反応によって配信対象が広がる仕組みが成立している。
反応が高い動画は段階的に配信範囲が拡大し、投稿者が大規模なファン基盤を持っていなくても視聴数が伸びる可能性がある。これは、新興ブランドや中小企業にとって極めて有利な条件だ。
TikTokは、認知拡大・採用・購買・ブランド形成にまで寄与するポテンシャルを持つ（画像出典：マクロミルグループによる調査｜2025年6月発刊「TikTok Socio-Economic Impact Report〜日本における経済的・社会的影響〜」）拡大画像表示
まず、認知・ブランディングの面では、従来のマス広告では届きにくい層に対して効率的にリーチが可能だ。特に若年層だけでなく、多様な年代の利用が進んでいるため、地域密着型の企業からEC事業者まで幅広く活用の余地がある。
次に、採用領域でも強みがある。求人媒体では出会えない潜在層にリーチできるため、応募者の質と量の向上に寄与する可能性がある。動画を通じて企業の雰囲気や働く姿を直感的に伝えられる点も、中小企業が抱える採用課題の解消に合致する。
さらに、購買行動にも直結しやすい。動画視聴からリンククリック、ECサイトへの誘導、予約や購入までの一連の流れがスムーズに設計でき、店舗への来店促進にも活用できる。TikTok上の動画コンテンツは、情報が直感的に伝わりテンポよく展開されるため、ユーザーが次のアクションに踏み出しやすい点が強みとなっている。
加えて、運用の手軽さも中小企業にとって重要だ。数万円から試せる低予算スタート、スマートフォンだけで制作できる動画、テンプレートを使った編集、そして広告配信の自動最適化など、負担を最小限に抑えながら成果を狙える仕組みが整っている。実際、多くの企業が自動運用を活用し効率的に出稿している。
広告が自然に受け入れられ、フォロワーに依存せず、成果に直結しやすい構造がある。こうした特長を踏まえると、TikTokは中小企業の複数の課題へ同時にアプローチ可能で、非常に相性の良いプラットフォームといえる。
*3：TikTok Marketing Science グローバル 広告への注目度＋ブランド構築調査2021
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コンバージョン率、驚異の67％向上
中小企業2社の成果事例
中小企業とTikTokの相性の良さを語る上で、TikTokを活用した具体的な事例が非常に分かりやすい指標となるだろう。
製造業に特化した求人サイト「ジョブハウス工場」を運営するTechouseは、「おすすめ」フィード内の動画と動画の間に60秒の広告を流すインフィード広告を戦略的に活用した。
1カ月にわたるキャンペーンを通じて、戦略的なオーディエンスターゲティングを実施。インプレッション数36万8000超、クリック回数1500超、そして工場・製造業職種への応募においては18.8％という驚異的なコンバージョン率を達成した。他の広告配信プラットフォームで実施したキャンペーンと比較しても、TikTokでのキャンペーンははるかに高いコンバージョン率を達成し、ページ訪問者数・コンバージョン率増加をより低コストで実現、多くの実績につながった。
EC領域では、オンラインギフト専門ショップであるTANPが、Spark Adsのテストキャンペーンを実施して成果を上げている。
TANPは、さまざまなカテゴリーのギフトアイテムを取りそろえ、顧客はオンラインストアやアプリから購入・配送までを行うことができる。シーンに応じたギフトを提案するエンド・ツー・エンドのサービスによって、プレゼントのアイデアを探している顧客に対し、シームレスで便利なプロセスを提供している。
TikTokが多くのユーザーにリーチできるプラットフォームであると捉えた同社は、Spark Adsの効果を検証し、より多くのアプリインストールを促進する最適なキャンペーン設定を見つけることを目的に出稿した。
このキャンペーンでは、ネイティブ広告フォーマットであるSpark Adsを用いて、自社アカウントやクリエーターによるオーガニック投稿動画をブーストし、高パフォーマンスなオーガニックコンテンツによるリーチとビジネスの可能性を最大化した。さらに、マーケティング費用を最適化するためにカスタムオーディエンスを活用し、過去にアプリをインストールした既存顧客を除外する設定を行っている。
クリエーティブ面では、季節のおすすめギフト、開封動画、商品紹介、1日のVlogなど、複数のスタイルを組み合わせ、広告キャンペーンとTikTokページへのトラフィック増加をてこに、ユーザーを楽しませる強力なクリエーティブ戦略を構築した。
その結果、同時期に実施された非Spark Adsキャンペーンと比較して、コンバージョン率は67％向上し、アクション単価は39％低下した。インプレッション数も30万8000を超え、従来の広告キャンペーンを42％上回る成果を記録している。この成功により、TANPはブランド成長におけるSpark Adsの有効性を確認し、今後のキャンペーンでさらなる成果を上げるための「勝ちパターン」を見いだしたと位置付けている。
こうした事例を支えているのが、Spark Adsというフォーマットそのものの特徴だ。既存のオーガニック投稿をそのまま広告として活用できるため、クリエーティブ制作の負担を抑えつつ、すでに反応の良いコンテンツのリーチを拡張できる。顧客のコメントやエンゲージメントが載った状態で配信されることで、広告でありながら自然な信頼感を醸成しやすく、視聴からアプリインストールや購入といったアクションへとつなげやすい。中小企業にとっても、日々の投稿を土台としながら効果的な広告配信につなげられる実践的な選択肢だといえる。
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「面白いコンテンツが正当に広がる」
顧客基盤と収益に寄与するTikTok
注目すべきは、TikTokが、中小企業が限られたリソースで成果を上げるための有力な選択肢となっていることだ。広告が自然に受け入れられる環境、フォロワーに依存しない拡散構造、運用の手軽さ、そして実際の成功事例。これらの要素がそろうことで、認知、採用、購買といった複数の領域で成果を生み出している。
フォロワー数や会社規模にかかわらず「面白いコンテンツが正当に広がる」構造は、あらゆる企業に平等なチャンスを提供するものだ。中小企業が次の成長機会を求めるとき、TikTokはその現実的な選択肢として大きな存在感を放っている。
