「ほしいときが買いどき」──商品のパフォーマンスを決める「第3の要素」

 さて、機能性パフォーマンスと情緒性パフォーマンスについて見てきました。ただし、商品の価値はこの2つだけでは決まりません。ここで大きく影響してくるのが時間です。

 たとえば、機能性パフォーマンスと情緒性パフォーマンス、さらにはコスト(価格コスト+到達コスト)がまったく同じ商品Aと商品Bがあったとしましょう。この時点では2つの商品のコストとパフォーマンスには、なにも差がありません。

 しかし、商品Aは明日すぐ手に入るのに、商品Bのほうは3カ月後の入荷まで待たなければならないとしたらどうでしょうか? 買い手は間違いなく商品Aを選ぶはずです。

 これは、なぜでしょう?
 もちろん、商品Aのほうがパフォーマンスが高いと判断されたからです。

 ここからもわかるとおり、効能を享受するまでにかかる時間の短さもまた、その商品の価値を大きく左右します。これはおそらく、「いまほしい」商品だからといって、「3カ月後にも同じくらいほしい」保証がないからでしょう。まさに「ほしいときが買いどき」なのです。

 この時間の短さによって商品のパフォーマンスを高めた古典的な例といえば、アパレルメーカーのベネトンです。当時、ベネトンは色のついた毛糸を使うのではなく、ニットを編み上げてから後染めするという生産方式を取り入れることで、さまざまな色のニットが即座に手に入るようにしました。アパレル商品はその特性上、とくに「着たいときが買いどき」なので、当時は大いに評価されたようです。

 以上の内容をまとめると、商品のパフォーマンスは以下によって決まると言えます。

 商品のパフォーマンス=(機能性パフォーマンス+情緒性パフォーマンス)×効能を享受するまでにかかる時間の短さ

 ちなみに、最後の部分が「×」であって「+」になっていないのは、「効能を享受するまでにかかる時間の短さ」が、前者2つのパフォーマンスと統合できる軸上にはないからです。極論を言うなら、前者2つが抜群の商品であっても、価値を享受できるのが100年後だとしたら、その商品のパフォーマンスはかぎりなくゼロに近づくことになります。