誰でも「頭がいい人」のように思考するためのツール「フレームワーク」。だが世の中には、いろいろなフレームワークが溢れていて、「いざ使ってみよう!」というときにどれを使えばいいのかわからない…。こんな悩みをかかえている人も多いだろう。それを解決してくれるのが、『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』だ。厳選されたフレームワークだけを紹介し、使い方のコツをシンプルにまとめた非常に便利な1冊だ。本連載では、本書の内容から、「誰でも実践できる考えるワザ」をお伝えしていく。

グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50Photo: Adobe Stock

AIDAとは?

 仮に、その商品のことを知っている人がほとんどいないにもかかわらず、店頭で販売員に積極的に売ってもらうよう働き掛けても、無駄に販売員の時間を浪費するだけで効果は薄いでしょう。

 商材にもよりますが、販売員が対面営業を行うのであれば、ある程度、顧客にすでにその商品について、少なくとも関心を持ってもらえている状態にしておく方がはるかに有効です。

 そこで実際のコミュニケーション戦略の実行に当たっては、図表23-1に示したようなAIDAモデルを用い、その状況に見合ったコミュニケーション施策をとるようにするのです(DとAの間にM:Memoryを入れてAIDMAモデルとすることもあります)

 AIDAはプロセス型のフレームワークであり、ボトルネックを作ることなく、プロセスをスムーズに流すことが主眼となります。

 昨今は情報洪水ということもあり、企業が特に関心を払っているのはAttentionの獲得です。成熟期を迎える商品が多く、シンプルなメッセージでは差別化できる余地が小さくなっているという事実もこの状況の背景にあります。

 そんな情報洪水の中で、いかに少しでも目立って顧客のAttentionを獲得するか、もしくはひとたび獲得したAttentionを無駄にせず、購買への転換率を高めていくかに注目が集まっています。

 なお、AIDAは非常に分かりやすいフレームワークである半面、定量的な測定が難しく、PDCAを回しにくいという批判もあります。

 そこで開発されたのが、AMTUL(Attention - Memory - Trial - Usage - Loyalty)のモデルです。

 それぞれのステージにおいて、再認知名率(「○○というブランドを知っていますか?」)、再生知名率(「○○というカテゴリーの中で好きなブランドを○個挙げてください」)、使用経験率、主使用率、今後の購買意向率といった指標を用いてプロセスを可視化することで、より確実に購買、さらにはリピートにつなげようとするのです。

 なお、AIDAやAMTULは基本的にリアルの世界を前提としています。しかし、ITによってこのコミュニケーション戦略は大きな変化を受けています。

 そこで、IT時代の新しい行動変容モデルを図表23-2に紹介しましたので参考にしてください。いずれもShare(共有)という行動が最後にあるところがポイントです。

事例で確認

 ロッテのFit’sは、従来のガムよりも軟らかいガムです。「固いから」という理由で、ガムを敬遠する若者が増えてきた中で、あえてその若者をターゲットと定め、従来のガムよりも軟らかい製品を市場導入したのです。

 そのコミュニケーション戦略ですが、まずは、若者のAttentionを獲得すべく、軟らかさを表現した不思議な動きのダンスとそれに合わせた音楽が流れるCMを流しました。

 次に、Web上で「Fit’sダンスコンテスト」を行い、YouTubeを使って一般の若者から動画を集めるというキャンペーンを行いました。これはAttentionからInterestへの移行を狙ったものです。

 その上で、若者が良く利用する場所や、電車のつり広告に「食べ方」の広告を展開し、Desireを刺激しました。そして最後に、駅中のKIOSKやコンビニ等、売り場のレジ脇に商品を置くことで、Actionを起こさせるわけです。

用いる場面
・顧客を最終的な行動(購買)に導くべく、彼らが今どの状態にあるのかを知り、適切なコミュニケーション施策をうつ
・現在とっているコミュニケーション施策が顧客の購買決定プロセスに照らして有効かどうかを確認する
コツ・留意点
1.
AIDAやAMTUL、あるいは図表23-2に示したAISAS、AISCEASなど、購買意思決定プロセスのモデルにはさまざまなものがあります。
どれかが最も優れているというわけではありません。目的や商材の特性などに応じて適切に使い分けることが必要です。

2.
Attentionの獲得に関しては、従来は大企業が有利な地位にいました。資金力があるうえ、過去の実績が消費者の先入観となるからです。
ただ、ITの進化によって顧客との力関係に変化が見られ、小企業でも工夫次第でAttentionを獲得する機会は徐々に増えてきています。
とは言え、比較的資金力に劣る企業は、Attentionから次のプロセスへの転換率を高める施策に注力するのが常套手段です。
現実の世界でも、伊藤園は、初の缶入り緑茶飲料という独自性や「お~いお茶」という斬新なネーミング、パッケージに消費者から応募した「新俳句」を載せるなどの工夫を打ち出し、自販機数で伊藤園に大きく勝るコカ・コーラやサントリーなどの大手に対抗して、緑茶カテゴリーのトップシェアを維持しています。