飲酒は? 喫煙は? 肥満は? ストレスは?
本当に脳に悪いこと、いいことは何だろう?

脳の若返りと認知症治療の専門医・白澤卓二医師は『長寿脳──120歳まで健康に生きる方法』で、現代人の願いである健康長寿を脳から実現するノウハウを提案する。認知症にならずに体も長持ちさせるためには、40代からの脳のケアが大切だと著者はいう。本書では世界最新の医学で明らかになった認知症予防・改善策と、その研究からわかった脳のパフォーマンスを上げるために必要な生活習慣とは?

【糖質ゼロ】の食事で脳は働けるのか?Photo: Adobe Stock

脳と糖質の関係――。「糖質カット」でも脳は働けるという事実

 血糖値を上げない食事として、また体重を減らすダイエット食として、糖質制限食やケトン食が注目されています。これらの食事法は糖質をとらないことが大原則なのですが、糖質をとらないと脳が働けないのではと疑問に思う方も多いようです。

 たしかに、脳のエネルギー源となるのは、糖質、あるいは糖質の代役となるケトン体の2つです。

 しかし実際は、たとえ糖質をまったくとらなくても、脳が消費するエネルギーの40%程度は糖質です。どういうことでしょうか?

 じつは人間の体は、糖質を口にしなくてもまるで錬金術のように、たんぱく質など糖質以外のものから糖を作り出しているのです。

 要するに、脳は糖を必要としているけれども、食べ物として糖質をとらなくても、体内で合成して脳の栄養をまかなえるというわけです。この誰の体にも備わっているシステムを「糖新生」といいます。

仕事や生活のリズムを崩す血糖値スパイク

 糖質をとりすぎると太るうえに、糖尿病につながることもあります。一度に大量の白米や麺類を食べたり、砂糖たっぷりの甘いおやつを食べたり、じゃがいもやコーンを原料とした甘くはないけれども糖質量が多いスナックやせんべいなどを食べると、「血糖値スパイク」が起きます。

「血糖値スパイク」とは、一度に大量の糖質をとった場合に急激に血糖値が上がり、その高い血糖値を下げるために今度は大量のインスリンが分泌され、その反動で血糖値が急激に下がることです。

 血糖値の急上昇と急降下が起きるこの様子をグラフにすると、切り立った山のような線になります。これがスポーツで使うスパイクシューズのトゲトゲのように見えるので血糖値スパイクと呼ばれています。

 血糖値スパイクが起きると、血糖値は平常以下まで急激に下がります。そのため、食べたあとに眠くなったりだるさを感じたり、イライラしたり、すぐにお腹が空いたりすることもあります。

 血糖値スパイクがたびたび起きると糖尿病になるリスクが上がりますし、血糖値スパイクが起きるような食べ方は仕事や生活のリズムを崩しかねません。

おやつは甘くなくていい

 口から入る糖質が少なくても脳の活動には影響しませんから、主食(ごはん、パン、麺)の量は控えめにするのが正解です。おやつを食べるなら糖質を含まないものがベスト。ナッツ類や味つけされていないスルメなど、糖質がほぼゼロで噛みごたえがあるものがおすすめです。

本原稿は、白澤卓二著『長寿脳──120歳まで健康に生きる方法』からの抜粋です。この本では、科学的に脳を若返らせ、寿命を延ばすことを目指す方法を紹介しています。(次回へ続く)