稲盛和夫稲盛和夫氏は「環境にやさしい」を見事に経営に落とし込んだ Photo:JIJI

今やSDGsやESGを意識した経営がビジネス界の常識となったが、うわべだけを取り繕うような話も散見される。「経営の神様」と呼ばれた稲盛和夫氏は、SDGsやESGのような観点についてどう考えていたのか。過去の発言をつなぎ合わせると、きれいごとだけでは終わらない「稲盛流SDGs・ESG」が見えてくる。(イトモス研究所所長 小倉健一)

きれいごとだけでは終わらない
「稲盛流SDGs・ESG」とは?

 近年意識の高まりを見せる「SDGs」経営。持続可能な社会をつくっていくために欠かせない企業の取り組みであり、企業は自分の会社だけでなく取引先にまで責任を持ち、ビジネスをせよと言われている。しかし、提唱されて以来、「偽善的だ」「実効性に乏しい」との批判がつきまとっている。

 経済産業省資料(2019年5月『SDGs経営ガイド』)によれば、SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、2006年に国連が責任投資原則を提唱して以降、持続可能性を重視する取り組みは急速な拡大を見せている。そのような中、15年の国連サミットにおいて、グローバルな社会課題を解決し、持続可能な世界を実現するための国際開発目標であるSDGsが採択された。

 似たような概念に、「ESG」経営がある。ESGとは、企業の財務以外のパフォーマンスを評価するための指標で「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字をとった略語だ。ESG経営は、これら三つの要素を重視する経営手法を指す。

 また、そうしたESG企業を選別して投資対象とする「ESG投資」と呼ばれる言葉もある。

 SDGsはより広範な視点で、全世界の持続可能性に向けた目標を示しているのに対し、ESGは企業の社会的な責任と持続可能性を評価するための具体的な行動指針を示そうとしている。

 そのように、現代経営に取り入れることが求められているSDGsやESGだが、「経営の神様」との呼び声が高かった稲盛和夫氏が、SDGsやESGそのものに言及していることは、データベースで確認する限り確認できなかった。しかし、稲盛氏の過去の発言を掘り起こしてつなぎ合わせてみると、きれいごとだけでは終わらない「稲盛流SDGs・ESG」が見えてくる。