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アベノミクスで「給与引き上げ論」は盛り上がるか?
新浪社長の決断と現実の間に横たわる“乖離”の正体

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第265回】 2013年2月26日
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ローソン新浪社長の年収引き上げ発言
「給与引き上げ論」は高まるか?

 産業競争力会議のメンバーであるローソンの新浪剛史社長は、20歳代後半~40歳代のグループ社員の年収を、平成25年度に平均3%上げると発表した。具体的には、年2回の賞与に上乗せする形で平均15万円を支給するという。今回の新浪社長の決断もあり、「給与引き上げ論」が高まりそうな気配も出ている。

 ただ、これによって我々の給料が上がるかといえば、そう簡単な話ではない。何故なら、給与を払う側の企業にとって、業績が改善して従業員の給料を上げられる状況にはなっていないからだ。

 2013年3月期のわが国の主要企業(除く金融・電力)の業績は、前年対比で約3%の改善といわれている。この数字を見ると、確かに徐々に企業業績は回復しているとはいうものの、そのペースは緩やかであることがわかる。

 企業は業務活動を行って稼ぎ出した収益の一部を、従業員に給与という格好で分配する。経済学では、従業員に対する分配の割合を労働分配率という。通常、企業の業績が良くなって儲けが増えと、従業員に分配される給料は上昇することになる。逆に、企業業績が悪化すると、給与がカットされたり、従業員の整理=リストラが実施される。

 企業の儲けが増大しない状況下で給与を上げることは、企業にとってコストアップ要因となり、最終的には企業がつくる製品の価格競争力が低下する可能性が高い。製品の競争力が落ちると企業の収益状況が悪化し、最悪のケースでは、企業自身が淘汰を受けることにもなりかねない。

 そのため、アベノミクスの政策だからといって、企業が無理をして給与を上げてみても、一時的な現象になる可能性が高い。問題は、給与引き上げに見合った企業業績の改善がないと、いずれ給与水準は下がってしまうことだ。給料の引き上げは“ぬか喜び”だったことになる。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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