20万部のベストセラー、待望のマンガ版『マンガ このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』。「転職は悪」という風潮に一石を投じ、日本人の働き方を変えた北野唯我氏が、今回は「自分にはキャリアの武器が何もない」と思っている主人公の奈美(もうすぐ30歳)の悩みに答えを出す。「やりたいことがなければダメ」「S級人材以外は有利な転職は無理」など転職の常識が次々と覆される。
今回はスピンアウト企画。本書著者の北野さんに、2023年最新の転職対策についてインタビューした。第1回目は、「転職後に後悔をなくすための方法」について聞いた(取材・構成/川代紗生)。

「思ってたのと違う…」転職してから後悔する人と納得できる人の差

理想と現実のギャップに心が折れる…「リアリティショック」とは?

──転職活動にありがちな悩みですが、「入社してみたら、思ってたのと違った!」というギャップが生まれてしまうことって、ありますよね。入社前に、どんな情報をチェックしておくと良いでしょうか?

北野唯我(以下、北野):「働く人の本音」って、ホームページなどで開示されている情報を追いかけても、なかなか見えてこないものですよね。たとえば、「平均勤続年数:10年」という情報が出ていたとしても、この「10年」の意味合いまで読み解くのは至難の業です。

 会社としてはもっと長く勤めてほしかったのに、早めに辞められてしまった結果の「10年」なのか。それとも、もともと「10年くらいで入れ替わりは必要だよな」と想定していた結果の「10年」なのかによっても、意味合いは変わってきます。

 それをふまえて、私が提案したいのは、転職後の「リアリティショック」を最小限に抑える、という戦略です。

──リアリティショック?

北野:新しい環境に対して抱いていた「理想」と「現実」のギャップに打ちのめされ、落ち込んでしまう現象のことです。まさに、最初におっしゃっていた、「Aだと思っていたのにBだった」みたいな、入社前後のギャップですね。

 転職活動においては、このリアリティショックをいかにして最小限に抑えるか、という視点を持てるといいと思います。転職活動段階での自己分析・業界分析をおそろかにすればするほど、曖昧な情報だけを頼りに入社準備をしなくてはならなくなり、結果として、期待や不安もむやみに膨らんでしまいます。

 会社がオープンにしている場所には、ポジティブな情報しか書かれていないことが多いため、情報の裏どりをする姿勢が大事だと思います。

「働く人の本音」を見極める3つの方法

──リアリティショックを減らすために、具体的にはどんなことをしたら良いでしょうか?

北野:少なくとも、次の3つの方法は一通り実践できると理想的です。

 1つ目は、口コミサイトを見ること。「辞めた人の声」に目を通しておくだけでもいいと思います。ときには偏った意見が寄せられる場合もありますから、さまざまな部署・さまざまな職種のリアルな声を統括的に把握できると安心ですね。

 2つ目は、知り合いに聞くこと。入社を検討する企業で働いている人がいたら、非公式な場で本音を聞いてみるといいと思います。

 3つ目は、同業他社と相対比較すること。個人的に、とくに重要なのはこの3つ目かなと思っています。たとえば、口コミサイトに「激務。めちゃくちゃ忙しい」というコメントが多かったとしますよね。このとき、その「一社だけの問題」だと断定するのではなく、「もしかして、この業界全体の特徴なのではないか?」と、一度立ち止まって考える視点が必要です。

──「この会社だけの特徴」と、「この業界だったらどこに行ってもそう」という特徴と、見極める必要があるわけですね。たしかに、たとえばコンサル業界などは、業界1位、2位、3位……大手でも中堅どころでも、どの会社でも激務なイメージがあります。

北野:そうなんですよね。コンサル業界は、成果主義が当たり前。その前提を知っているかいないかで、「激務。めちゃくちゃ忙しい」というコメントの印象も変わりますよね。

 そもそも「激務は嫌だ」と思うのなら、コンサル業界自体を、就職先の選択肢から外したほうがいいのかもしれないし。あるいは、「優秀なコンサルタントを目指す以上、どこに行っても忙しいのは仕方がない」という覚悟を持って飛び込むのなら、リアリティ・ショックは少ないはずです。

「こんなはずじゃなかった」と思いながら働くのと、「こういうもんだよな」と思いながら働くのでは、転職後のメンタルも大きく変わると思います。

「強み転換理論」でその会社の弱みを見つける

北野:あとは、別の切り口でいえば、「強み」の裏返しから「弱み」を見極める、という方法があります。

──「強み」の裏返し?

北野:わかりやすい例でいえば、会社のアピールポイントとして「裁量権が大きい」と書かれていたら、そこから裏返してみると、その「弱み」ってなんだろうと、考えてみるんです。裁量権があるというのは、別の見方をすれば、自分でいろいろ決めなければならない、ということ。自由にいろいろ決められる分、休日に勉強したり、プライベートの時間も仕事のことが頭から離れなかったり……といった状況になるかもしれない。

──出世の差も出やすそうですよね。あとから入社した後輩にあっという間に追い越されて……みたいなことも起こりそう。

北野:そうそう。「強み」の裏返しで、「こういうことがありそうだな」と推測していくことは大事だと思います。

 もっと言えば、「裁量権がある」という強みに惹かれてやってくる社員というのは、やっぱり「自分の力を発揮したい!」という思いが強い、ワーカホリックな人が多い可能性が高いんですよね。で、そういうストイックに働くのが好きな人にとっては、「プライベートで勉強しなきゃいけないこと」「売上に厳しい」って、「弱み」とは思えないんですよ。

──あああ、たしかに! 別に、悪いことだとも思っていないというか。「当たり前でしょ」みたいな感じですよね。

北野:まとめると、

・リアリティショックを最小限に抑えるというスタンス
・3つの方法で「働く人の本音」を調査する
・「強み」の裏側にある「弱み」を分析する

 これらを実践してみるだけでも、「転職して失敗した!」という後悔は少なくなると思います。