「転職してみたら、思ってたのと違った!」社内システムや評価制度など、転職後に後悔。こんなことなら、前の会社でそのまま働いていた方がマシだったかもしれない……。売り手市場のいま、転職を考えている人も多いでしょう。今回は、「後悔しない転職」を実現するために気をつけるべきポイントを、専門家に聞いてみることにしました。
質問に答えていただくのは、シリーズ累計20万部突破の『マンガ このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』をはじめ、多数の著書を出版されているベストセラー作家・北野唯我さんです。
人材ポータルサイトを運営する「ワンキャリア」の取締役を務め、各メディアに「職業人生の設計」「組織戦略」の専門家として登場する北野さんに、2023年の就活対策について相談する全4回企画。最終回は、「転職活動を続けていても結果が出ないときの対策」について聞きました(取材・構成/川代紗生)。

転職の思考法

1年続けても内定先が決まらない…
転職活動が泥沼化したとき、どうすれば?

──1年転職活動を続けても、なかなか就職先が決まらない……。そんな悩みへの対処法について質問です。うまくいかないときは、「年収、職種など条件を変えて探す」「エージェントを変える」など、さまざまな方法を検討する場合が多いと思いますが、北野さんは、まずどんなことをすればいいと思いますか?

北野唯我(以下、北野):そもそも、「受からない(内定が出ない)」と「決められない(内定は出ているが、踏ん切りがつかない)」の2パターンがあると思います。

 行きたい会社、行きたい業界があるのに、なかなか内定をもらえない。面接を突破できないパターンなのか、それとも、「内定をもらえたのはいいけど、悪い口コミあったし、これなら今の会社でそのまま働いてるほうがいいかな……」みたいに、最後まで意思決定できないパターンなのか。

 自分がどちらに当てはまるのか、しっかり確認しておきましょう。これがファーストステップですね。

──たしかに、どちらなのかによって、戦略も変わりますね。

自分の市場価値を測るための9つの質問

北野:ではまず、「受からない(内定が出ない)」パターンで考えてみましょうか。この場合、「メタ認知」能力を高めることを課題にするといいと思います。

 「メタ認知」とは、自分の強み・弱みを客観的に分析すること。「私はこうだと思う」という主観的な自己理解だけではなく、面接官や企業など、他者はどう捉えるだろうか? と、他者の目線で観察する力が重要です。

 自己評価と他者評価のあいだのギャップが大きすぎることによって、自分のマーケットバリューを見誤っているケースも珍しくないので、そういう場合は、まず「自分の市場価値を測るための9つの質問」に取り組んでみてほしいです。

──『転職の思考法』の中でも、かなり重要な質問でしたよね。

──この「業界の生産性」「人的資産」「技術資産」の3つの掛け合わせで自分の市場価値を測るというやり方、とても画期的だと思いました。なんだかんだ、ここまで細かく自己分析できていなかったなと反省したのを思い出します。

【自分の市場価値を測るための9つの質問】
①技術資産

質問1 会社を変えても、価値のあるスキルをどれだけ持っているか?
質問2 そのスキルの「賞味期限」はいつまでか?
質問3 他の会社でも通用する「レアな経験」がどれだけあるか? その経験は、世の中からどれだけ「強いニーズ」があるか?


②人的資産
質問4 社内に、自分が会社を変えても、喜んで力を貸してくれる人が、どれだけ存在するか? その人物たちは、意思決定の力がどれだけあるか?
質問5 社外に、自分のために喜んで力を貸してくれる人物がどれだけ存在するか?
質問6 その人物たちは、意思決定の力がどれだけあるか?


③業界の生産性
質問7 自分が所属しているマーケットの「一人当たりの生産性」はどれだけ高いか?
質問8 自分が所属しているマーケットに今後の「成長性」はあるか?
質問9 今後、どれだけ「自分の市場価値」は成長が見込まれるか?
「転職がうまくいかない人」が知っておきたい“9つの質問”
『転職の思考法』より

北野:いや、自己流だと、なかなか難しいですよ。これも、私が人材系の会社の役員をし、さまざまな転職活動者の話を聞いてようやく構築できた理論ですし、独力でヌケモレなく自己分析するのは、簡単ではないと思います。

 一人では不安、という人は、キャリアアドバイザーに相談するのもいいと思います。

 いずれにせよ、「1年もがんばってるのに内定が全然もらえない」という人は、自己認知と他者認知のあいだで、何かしらの「ズレ」を解消できていないままでいる可能性が高いです。

 「何もがんばってこなかったから、どこにも受け入れてもらえないんだ」という人もなかにはいますが、ほとんどの場合、それは戦略ミス。日本中のどこか、一社以上は、採用してくれる会社があるはずです。

 そのズレが何なのか突き止めるためにも、初心に戻って、自分の市場価値を測りなおせるといいですね。

転職における失敗とは何か

──もう1つは「内定は出ているが、決断できない」パターンとのことでしたが。

北野:「最高の職場」があると信じるがゆえに、「もっといいところがあるはず」「もっと上に行ける」と、いつまでも決めきれない。これも、よくあるケースですね。

 よく考えれば、最高の職場、最高の環境なんて、存在しないじゃないですか。突き詰めれば、どの会社だって絶対に何かしらの弱みがある。今はメディアにたくさん取り上げられて盛り上がっているように見える会社でも、5年後、10年後には衰退してしまうかもしれません。

──そうなんですよね。頭ではわかっているのに、どうせ転職するならと、つい完璧を求めすぎてしまう人は多いと思います。

北野:これは転職活動だけではなく、人生全般的に言えることですが、完璧な選択肢を一生懸命探すのではなく、選んだ選択肢を正解にしていくしかないと思うのです。どの道を選んだって、一度決めたら後戻りはできないのだとしたら、「正解だった」と言えるように行動し続けるしかない。

 そう考えると、転職活動において大切なのは、「入社したらほぼ確実に市場価値が下がる会社」を、いかに避けるか、だと思うのです。100%ピッタリの会社は存在しないわけですから、絶対NGの危ない道を見極めること。

──たしかに、人生の本質ですね。恋愛も結婚も仕事も、どこかに必ず100%正解の道があるような気がしてしまって、ぐるぐると考え続けて、結局何も決められない。

北野:「辞めるべきか、新しい環境にチャレンジするべきか、考え続けて答えが出ない」という人はたしかに多いです。「失敗したくない」という人が多いのでしょう。ただ、多くの成功者が言うように、最後さえ成功すれば、その途中の失敗も、すべては「必要だった」と言えるようになります。考え方次第です。

 結局のところ、「転職における失敗」とは、「腹を括るべきタイミングで、覚悟を決めきれないこと」に尽きると私は思っています。

 覚悟を決めて決断する人は、長い目で見れば失敗のない人生を送ることができますが、腹を括れない人は、永遠に「あのときああしておけばよかったのではないか」と、幻想の選択肢の中で彷徨い続けることになります。

 『転職の思考法』は、覚悟を決める手伝いをしているのかもしれない、と思うことがあります。一人では勇気が出ないとき、将来に不安が残っているとき。そんなとき、パラパラとページをめくって、何かヒントになる言葉と出会ってもらえたら……著者として、これほど嬉しいことはないですね。