「1日3食では、どうしても糖質オーバーになる」「やせるためには糖質制限が必要」…。しかし、本当にそうなのか? 自己流の糖質制限でかえって健康を害する人が増えている。若くて健康体の人であれば、糖質を気にしすぎる必要はない。むしろ健康のためには適度な脂肪が必要であるなど、健康の新常識を提案する『ケトン食の名医が教える 糖質制限はやらなくていい』(萩原圭祐著、ダイヤモンド社)。同書から一部抜粋・加筆してお届けする本連載では、病気にならない、老けない、寿命を延ばす食事や生活習慣などについて、「ケトン食療法」の名医がわかりやすく解説する。

【名医が教える】ケトン体の増加が、がん患者さんにもたらすメリットとは?Photo: Adobe Stock

ケトン食でケトン体が増えれば、
全身倦怠感が改善され楽になる

 その他には、60代の胸水が見られた肺がん患者さんは、「抗がん剤を朝、受けてきました、先生!」と、自分で車を運転して外来によく来られていました。

「しんどくないですか?」と聞くと、「大丈夫ですよ」などと、元気な声でお答えになるのです。

 もちろん、患者さんの全員ではないのですが、血中のケトン体の値が上がりだすと、抗がん剤治療による全身倦怠感が改善され、楽になる患者さんがいるようなのです。

 抗がん剤治療の副作用の一つに、投与後の強い吐き気が挙げられます。

 そのせいで、満足に食事もとれなくなる患者さんもいます。食事をとると気持ち悪くなることが、残念ながらしばしばあります。

細胞の中のミトコンドリアで
ATPというエネルギーが生成される

 ケトン食でケトン体が増えれば、細胞の中のミトコンドリアで、ATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーが生成されます

 それが全身倦怠感が改善する一つの理由かもしれません。しかし、正直なところ、そのメカニズムはまだはっきりとはわかっていません。現在も研究中です。

 いずれにしてもケトン体には、一部の患者さんで、抗がん剤治療の副作用を緩和する働きがあることは確かなようです。

萩原圭祐(はぎはら・けいすけ)
大阪大学大学院医学系研究科 先進融合医学共同研究講座 特任教授(常勤)、医学博士
1994年広島大学医学部医学科卒業、2004年大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了。1994年大阪大学医学部附属病院第三内科・関連病院で内科全般を研修。2000年大学院入学後より抗IL-6レセプター抗体の臨床開発および薬効の基礎解析を行う。2006年大阪大学大学院医学系研究科呼吸器・免疫アレルギー内科助教、2011年漢方医学寄附講座准教授を経て2017年から現職。2022年京都大学教育学部特任教授兼任。現在は、先進医学と伝統医学を基にした新たな融合医学による少子超高齢社会の問題解決を目指している。
2013年より日本の基幹病院で初となる「がんケトン食療法」の臨床研究を進め、その成果を2020年に報告し国内外で反響。その方法が「癌における食事療法の開発」としてアメリカ・シンガポール・日本で特許取得。関連特許取得1件、関連特許出願6件。
日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本臨床栄養代謝学会(JSPEN)などの学会でがんケトン食療法の発表多数。日本内科学会総合内科専門医、内科指導医。日本リウマチ学会リウマチ指導医、日本東洋医学会漢方指導医。最新刊『ケトン食の名医が教える 糖質制限はやらなくていい』がダイヤモンド社より2023年3月1日に発売になる。