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上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

なぜ日本はG20で名指し批判を回避できたのか
――ターニングポイントを迎える日本外交

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第54回】 2013年2月27日
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 安倍晋三内閣の経済政策「アベノミクス」が円安・株高を生じさせ、景況感をよくすることで、日本国内にある種の高揚感が生まれている。一方で「失われた20年」と呼ばれた期間、金融緩和や公共事業が繰り返されてきたが、本格的な成長に結びつかず、その効果が終われば再び景気が低迷してきたことを、日本国民はよくわかっている。これらの政策は「時間稼ぎ」に過ぎず、「第3の矢」と呼ばれる「成長戦略」が最も重要だと指摘する識者は多い。

 安倍首相自身も、「成長戦略」の重要性を認識している。首相が「時間稼ぎ」の金融緩和・公共事業に徹底して取り組む理由は、7月の参院選で勝利して「ねじれ国会」を解消し安定多数を獲得することで、既得権との戦いになる「成長戦略」に万全の態勢で取り組むためであろう。安倍首相が参院選前に第2弾の景気対策を打ち出すとの噂があるほど、首相の参院選に賭ける思いは強い。

 識者や経済界にも、安定多数の確保までは「時間稼ぎ」が許されるという意味で、アベノミクスを支持する向きは多い。だが、国会で安定多数を確保しても、既得権を抑えられるとは限らない。自民党政権の歴史を振り返ると、むしろ安定基盤を持つ政権のほうが、短命に終わってきた。例えば、竹下登内閣が総主流派体制による政権運営に乗り出したが、わずか1年半で退陣に追い込まれたのだ。

 それは、自民党という政党が、さまざまな業界団体の支持を集める、政策志向の幅の広い派閥の連合体という特徴を持ってきたことに由来する。自民党が選挙で勝利すると、さまざまな支持者をバックにした議員が大量に当選する。そして「選挙の勝利」を盾にして、それぞれの「既得権の維持・拡大」を主張し始める。安定多数を確保すればするほど、自民党内ではさまざまな政策・利害の対立が激化するという現象が起こる。その結果、首相は党内の掌握が困難となり、政権が短命に終わってしまうのだ。

 一方で、安定基盤を持たない政権ほど、歴史に残る大改革を成し遂げている。小派閥の長でしかなかった中曽根康弘内閣は、国鉄民営化など行革を成し遂げた。自民党・社会党・さきがけの連立政権では、村山富市内閣が消費税率の3%から5%への引き上げ、地方消費税を導入した。橋本龍太郎内閣は省庁再編、金融ビッグバンを実現した。安全保障政策も、自民党政権が安定多数を誇る時代には進ます、中道左派政党が加わった政権のほうが進展した(前連載第29回を参照のこと)。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


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国際関係、国内政治で起きているさまざまな出来事を、通説に捉われず批判的思考を持ち、人間の合理的行動や、その背景の歴史、文化、構造、慣習などさまざまな枠組を使い分析する。

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