「1日3食では、どうしても糖質オーバーになる」「やせるためには糖質制限が必要」…。しかし、本当にそうなのか? 自己流の糖質制限でかえって健康を害する人が増えている。若くて健康体の人であれば、糖質を気にしすぎる必要はない。むしろ健康のためには適度な脂肪が必要であるなど、健康の新常識を提案する『ケトン食の名医が教える 糖質制限はやらなくていい』(萩原圭祐著、ダイヤモンド社)。同書から一部抜粋・加筆してお届けする本連載では、病気にならない、老けない、寿命を延ばす食事や生活習慣などについて、「ケトン食療法」の名医がわかりやすく解説する。

【名医が教える】3年生存率は44.5%、がんケトン食療法の驚きの研究結果Photo: Adobe Stock

大阪大学医学部附属病院での
がんケトン食療法の研究結果

 今振り返ると、がんケトン食療法の臨床研究を継続するのは、なかなか大変でした。当初は、希望される患者さんが全く集まらず、研究はなかなか進みませんでした。

 さらに、様々ながんの患者さんのデータを、最終的に生存率で評価する作業は、終わりの見えない道を進んでいくようでした。

 正直なところ、2、3回はプロジェクトを中止することを考えました。

 しかしそんなときは必ず、今まで協力してくれた患者さんたちや、新たにケトン食を開始した患者さんの笑顔が頭をよぎりました。

 やはり、ここであきらめるわけにはいかないと強く思って、粘り強く続けたというのが本当のところです。そして2013年から行ったがんケトン食療法の全体の傾向を、2019年にまとめてみました。

 様々ながんの臨床病期Ⅳ期の55人に、臨床研究の同意を得ました。

 そのうち実際にがんケトン食療法を行ったのは、50人でした。このうち37人については、がんケトン食療法を少なくとも3か月間行い、効果の有無を評価することができました。

 37人の患者さんの内訳は、以下の通りです。

 ●平均年齢は54.8±12.6歳
 ●男性15例、女性22例
 ●肺がん6例、大腸がん8例、乳がん5例、すい臓がん4例、その他のがんは14例

 でした。

 まとめると、驚くような結果が得られました。

 3年生存率は、44.5%。

 1年後の臨床評価では、がんが完全に消失した完全寛解が3例、部分寛解は7例、最長生存80.2か月という非常に良好な結果でした。

すべてのがんⅣ期での生存率は、29.9%

 この結果は、一般の人たちにはピンとこないかもしれませんので、参考になるデータを示します。

 日本の主要ながん治療病院が発表している全がん協加盟施設の生存率協同調査というサイトがあります。全がん協生存率では、すべてのがんⅣ期での生存率は29.9%。肺がんⅣ期の3年生存率は14.6%と低いものです。

 一つのポイントとしては、この生存率は、基幹病院でがんがⅣ期と診断されてからのものですが、私たちの研究に参加された患者さんは、ケトン食を開始してからの生存率になるので、遅い人では、診断から半年から1年以上経過しています。

 私たちの研究は、不利な条件になっているにもかかわらず、従来からの報告より十分な臨床効果が示されているのです。

(※本稿は『ケトン食の名医が教える 糖質制限はやらなくていい』の一部を抜粋・編集したものです)

萩原圭祐(はぎはら・けいすけ)
大阪大学大学院医学系研究科 先進融合医学共同研究講座 特任教授(常勤)、医学博士
1994年広島大学医学部医学科卒業、2004年大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了。1994年大阪大学医学部附属病院第三内科・関連病院で内科全般を研修。2000年大学院入学後より抗IL-6レセプター抗体の臨床開発および薬効の基礎解析を行う。2006年大阪大学大学院医学系研究科呼吸器・免疫アレルギー内科助教、2011年漢方医学寄附講座准教授を経て2017年から現職。2022年京都大学教育学部特任教授兼任。現在は、先進医学と伝統医学を基にした新たな融合医学による少子超高齢社会の問題解決を目指している。
2013年より日本の基幹病院で初となる「がんケトン食療法」の臨床研究を進め、その成果を2020年に報告し国内外で反響。その方法が「癌における食事療法の開発」としてアメリカ・シンガポール・日本で特許取得。関連特許取得1件、関連特許出願6件。
日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本臨床栄養代謝学会(JSPEN)などの学会でがんケトン食療法の発表多数。日本内科学会総合内科専門医、内科指導医。日本リウマチ学会リウマチ指導医、日本東洋医学会漢方指導医。最新刊『ケトン食の名医が教える 糖質制限はやらなくていい』がダイヤモンド社より2023年3月1日に発売になる。