中国の国旗写真はイメージです Photo:PIXTA

福島第一原発からの処理水の放出について中国が強硬に反対している。これまでなら、日本でも多少の反対がもっとあったはずだと私は思うのだが、反対運動は低調であるように思われる。私の考えでは、中国があまりに強硬なので、反対すると彼らの味方というイメージが付いて反対しにくくなっているのではないかと思う。しかし、トリチウム排出を弁護する側も、少し弱いのではないかと私は思う。専門家の意見、他国の事例、過去の事例を十分に生かしていないのではないだろうか。(名古屋商科大学ビジネススクール教授 原田 泰)

世界の主要原発の
トリチウム年間排出量

 私は、トリチウムを含んだ水を放出することが安全かどうかについて何の知識もない。自分の知識のない場合にどうするかと言えば、普通は、専門家の意見を聞き、他の国がどうしているか、また、過去はどうだったのかを調べることになる。

 もちろん、専門家と言ってもあまり当てにならないことも多いのだが、国際原子力機関(IAEA)が安全だと言っているのだから大丈夫だろうと私は思う。

 次は、他の国がどうしているかだが、原子力発電所を持つすべての国がトリチウムを放出している。それを示したのが、図1である。図1では数字が読みにくく、かつ範囲で示した数字を示していないので、同じデータを表1でも載せている。

 図1と表1によると、日本のトリチウム排出量は、福島第一で液体として2.2兆ベクレル、気体として1.5兆ベクレルである。ただしこれは事故以前の排出量で、今後の排出量を事故以前の排出量以下に抑えるということである。

 福島と同型で、現在稼働しているBWR(沸騰水型軽水炉)の排出量が、液体で0.0316~1.9兆ベクレル、気体で0.077~1.9兆ベクレルということだから、達成できるということだろう。また、これをIAEAの専門家も了解したということである。