最低賃金の新たな政府目標は
「30年代半ばまでに1500円」に
2023年度の最低賃金は全国加重平均の時給で1004円となり、政府目標の1000円を超えた。これを受け、岸田文雄首相は8月31日に開かれた新しい資本主義実現会議で、30年代半ばまでに最低賃金が1500円となることを目指すと表明した。
35年度に1500円に達するには、24年度から年率3.4%で引き上げていく必要がある。
新型コロナウイルス感染症の拡大で経済が大幅に悪化した20年度を除き、最低賃金は16年度から22年度まで毎年3%程度引き上げられ、23年度は4.5%だったから、引き上げのペースを大幅に加速させるというわけではない。
だが、問題はどのような経済環境の下で新目標を達成するかだ。
全体の賃金や物価が低迷している状況で最低賃金が上がれば、低賃金労働者の所得環境は改善されるが、一方で企業には人件費負担が重くのしかかる。とりわけ中小事業者は収益が圧迫され、低賃金労働者で失業が発生することになりかねないし、事業者が廃業を迫られるといったことにもなりかねない。
雇用環境の悪化や事業者の廃業といった悪影響を抑えつつ新目標を達成するには、円滑に価格転嫁できる環境の整備や生産性向上の取り組みなどのほかにも、いくつかの工夫が必要だ。