猛烈仕事人間だった主人公は、「忙しい」を理由にたくさんの人間関係を捨ててきた。学生時代の友人の娘が亡くなったことを知りながら、お悔みの手紙一通出さなかった。よき理解者だった叔母が行方知れずになっても探そうともしなかった。卒業旅行の途中で「帰国したらすぐに返すから」といって友だちからお金を借りた。でも返さなかった。そうして旅行の思い出を語り合えるかけがえのない友だちを失った――。
どうして人を大切にできなかったのだろう。もう関係修復は不可能なのだろうか。
新刊『僕は人生の宿題を果たす旅に出た』(リー・クラヴィッツ著)は、リストラされたのを機に、捨ててきた人間関係を取り戻そうと決めた男の物語である。彼は、関係を修復したい10人を選び、職探しをする代わりに1年かけて、再会を果たそうと決意する。
はたして彼は、大切な人との絆を結び直すことに成功するのだろうか。
『僕は人生の宿題を果たす旅に出た』のなかからプロローグの後半を掲載する。リストラされて初めて時間ができた主人公は、何十年も放っておいた段ボール箱の数々を開けてみた。するとそこには、数々の思い出が詰まっていて――。
思い出の詰まった段ボール箱
段ボール箱からは、過去二十五年のあいだに、親戚たちと一緒に撮った写真が出てきた。僕の結婚式や、ベンジャミンとキャロラインがまだエリザベスのお腹にいるときのものだ。
なぜ、僕たちはもっと頻繁に集まらなかったのだろうか。もちろん、仕事で忙しかったからだ。僕たち家族は、みんなこの病に罹っているのである。
人生はあっというまに過ぎていく。十五歳だった僕が、いまや五十五歳になり、やがてこの世を去る。それは僕を愛し、育ててくれた人も同じだ。
母方の祖母、愛するナナ・バーティがひとりでは暮らせないことを証明する、医師の診断書があった。僕が六歳のとき、祖母はゴー・フィッシュというトランプのやり方を教えてくれた。八歳のとき、いんちきをした僕を叱った。十二歳、十五歳、十七歳、二十一歳のときは卒業式に参列して、ゴー・フィッシュでいんちきをしたことがあるが、それでも僕を誇りに思う、とみんなに言ってくれた。