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世界標準の子育てPhoto: Adobe Stock

地頭力は、国語力に大きく左右される

 そもそも、地頭とは何なのでしょうか?

 ここにはいくつかの要素が含まれており、

 ・新しい知識や技能を早く身につけ、さらに応用できる能力
 ・見聞きしたことを理解し、すぐに再現できる能力
 ・柔軟で多面的な思考
 ・ミスが少なく、総合的な問題解決能力の高さ

 といった要素が挙げられます。

 俗に「要領がいい」などといわれる能力ですが、では、地頭は生まれつきの才能や資質なのか、それとも後天的に身につける力でしょうか?

 私の経験上、これは後天的に身につく能力です。

 小学生くらいになれば地頭の良し悪しは見えてくるので、遺伝や先天的な才能に感じられますが、そうではありません。

 幼児期から児童期にかけての教育が地頭力を生みだします。

 意外かもしれませんが、特に重要なのが「国語力」です。

 地頭力とは、高い言語能力やコミュニケーション力、また柔軟な思考力の掛け合わせによって生まれるもの。国語における「話す」「聞く」「読む」「書く」の力が高い子どもは、地頭力が非常に強い場合が多いのです。

 中でも、その根幹をなすのは「聞く力」であり、相手のことを知ろうという好奇心と共感をもって聞く力が、学習面と人間関係面の発達を促します。

まずは人の話を聞く耳を育てる

 国語力の中でも、もっとも重要なのは聞く力であり、さらにいえば、聞く力には「理解しようとして聞く力」「共感して聞く力」の2種類があります。

 新しい情報を吸収したり、他者と信頼関係を築いたり、異質な文化や価値観を理解していく上で、この2種類の聞く力は欠かせません。この力がそなわっていくと、吸収力と応用力の高い子どもになっていくのです。

 まず、「理解しようとして聞く力」ですが、この力が伸びることで子どもは他者との会話のやりとりの中で多くを学び取ることができます。

 たとえば、勉強ができる子どもは、「授業ではわからなかったので、あとで家に帰って復習する」ということがありません。復習をせずとも、授業の中だけで理解できているので、記憶の定着が早く、一度やったことは忘れないのです。

 では、家庭でどのようなことが行われているのでしょうか。

 それは、言葉への感性を高め、素直に人の言葉に耳を傾ける態度を作る習慣です。

 もっとも重要なのがいい親子関係であり、親からの愛情を伝える言葉、感謝する言葉、褒める言葉、認める言葉、共感する言葉が、子どもの言葉への感性を高めます。

 一方で、言葉への感性を低くするのが、「指示・命令・批判・ケチをつける」といった言動です。

「ああしなさい」「こうしなさい」「宿題やったの?」「勉強したの?」という指示や命令、小言は、子どもの素直に聞く態度を損ないます。

 これが積み重なることで、親の言葉が右から左に、頭の中をすり抜けていくようになるのです。そして親は、「言うことを聞かない」と嘆くようになります。

 子どもを一人の人格者として尊重することが、地頭力を高める第一歩です。

共感して聞く力があれば授業で多くを学べる

 もう一つの聞く力が、「共感して聞く力」。共感して聞く力のある子どもは、人間関係を作るのが早く、どんな場所にでも溶け込めるようになります。

 反対に、この能力が未発達だと「人の話に割り込む」「思ったことをすぐ口に出す」「話を最後まで聞けない」「他のことばかり(雑念)が頭に浮かぶ」といった傾向が強くなり、人間関係の構築に苦労をするのです。

 共感して聞く力を持つ子どもの家庭に共通するのは、「雑談が多い」こと。雑談とは、どうでもいい日常の他愛もない話、笑い話で、結論はありません。

 そうした話は子どもをリラックスさせ、コミュニケーションを楽しもうという意識を高める効果があります。

 特に食事時の会話は重要で、家族団らんの時には楽しい話、おもしろい話、夢がある話など、明るい話をすることです。

 まずは親の側からその日にあったおもしろい話を切り出し、「今日こんな人を見かけたよ」「今日こんなことがあったよ」など、子どもが乗ってくるように話をします。

 親が楽しそうに話をしていると、子どもも自分から話したくなり、さらに日常で見聞きするあらゆることがおもしろく映るようになり、それを伝えるようになるのです。

 なお、雑談は子どもの勉強への関心を高めるのにも非常に効果的です。その日の新聞やニュースで見た科学や社会に関連するネタを子どもに聞かせることで、その分野への関心を持たせることができます。賢い親は、そうして子どもの興味関心を引き出しているのです。

 一方、子どもの共感力を損なう言動が、「早く言って!」とせかしたり、「何を言ってるのかわからない!」「はっきりしゃべって」といった批判、「(言いたいことは)◯◯でしょ!」などと子どもの言葉を親が先に言ってしまったりすることです。

 親自身に子どもと共感しようという気持ちや態度が不足していると、子どもは親との会話を避けるようになっていきます。そして、親と良好な関係を築けない子どもは、学校のクラスメートや先生とも良好な関係を築くことができなくなります。

 たとえば幼児期の子どもがしつこく「ママ、ママ」と言ってくることがありますが、そんな時に「忙しいから後にして!」と背中越しに答えるのではなく、子どもが話をしたがっている時は「1分」でいいので手を休めて、子どもと向き合い、子どもの目を見て話を聞いてあげることが重要です。

 「ウンウン」とうなずいたり、「へえー」と相づちをうったり、「エッ」と驚いたり、子どもの気持ちに寄り添います。それにより、自分の思いや考えを相手にわかってもらう喜び、人と気持ちを伝え合うことの楽しさ、他者と共感できる感激を経験として蓄えられるのです。

Points 地頭力の基礎作り
・地頭力は、国語力に大きく左右される能力である
・中でも、「聞く力」が基礎作りに重要
・聞く力は大きく2つで、「理解しようとして聞く力」と「共感して聞く力」
・「理解しようとして聞く力」は、親からの信頼や感謝の言葉で育つ
・「共感して聞く力」は、雑談を通して身についていく
・いずれもNGなのは、「指示」「命令」「批判」「ケチをつける」こと

(本原稿はToru Funatsu著『すべての子どもは天才になれる、親(あなた)の行動で。』から一部抜粋・編集したものです)