リーマンショックや東日本大震災を経て、いまだ不況の出口に辿り付けない日本。そんななか、日本を離れて海外へ出て行く若者が増え続けている。彼らの中には、海外でのビジネスチャンスを夢見るビジネスマンや起業家たちも多い。そんな若者たちの間で、最近改めて渡航ニーズが増えている国の1つが、シンガポールなのだという。若者たちは日本を捨て、かの地に何を求めているのか。現地関係者の意見を聞きながら、シンガポールでビジネスを行なうことのメリットと落とし穴を探った。(取材・文/岡 徳之、協力/プレスラボ)
出国超過の6割は20~30代
海外を目指す若者が急増中
日本から若者が流出している――。最近、メディアでよく報道されるトピックではあるが、実感が湧かない人も多いだろう。それが正確な言い方かどうかは一概に言えないが、データを見ると確かに兆候はある。仮に「若者」と呼ばれる年代を30代後半までとした場合、若者の海外流出トレンドはかなり鮮明化している。
たとえば、総務省の人口推計(2013年2月公表)で直近の年別データを見てみよう。2011年(10月1日現在)、日本における日本人(外国人を除く)の入国者数(79万8792人)から出国者数(82万6503人)を引いた「社会増減」は、2万7711人のマイナスとなっている。つまり、海外から日本に帰国する日本人よりも、日本から海外へ出て行く日本人のほうが多い「出国超過」の状態なのだ(「出国」と見なされる基準は、海外に3ヵ月以上滞在した場合)。単月ベースで見ると、この傾向は2012年以降も続いている。
統計を発表した総務省統計局によると、「2011年に関しては、東日本大震災に伴う原発不安などの特殊要因もあったのでは」とのことだが、実は出国超過のトレンドは以前からずっと続いてきた。過去数年間だけ見ても、2006年~2009年にかけては毎年5~10万人ペースの出国超過であり、やはり社会不安の影響などもあったためか、リーマンショック前後の年は特に多かった。
同様に、この人口推計を日本人の若者世代(男女計)にフォーカスし、直近1年間の年別データ(2010年10月~2011年9月)を見ると、どうなるか。内訳は、0~4歳が4324人、5~9歳が2037人、15~19歳が1489人、20~24歳が4183人、25~29歳が5593人、30~34歳が4397人、35~39歳が2966人の出国超過となる。若者世代で唯一入国超過となっているのは、10~14歳(474人)だけだ。
特に働き盛りの20代(計9776人)、30代(計7363人)の出国超過傾向は顕著であり、日本人全世代の出国超過分の6割を占めている。40代以上になると出国超過の水準が一気に減ることを見ても、やはり若者の海外流出トレンドは相対的に強いと言える。背景にはどんな事情があるのだろうか。