文書、画像、音声、動画など、あらゆるファイルやコンテンツをクラウド上でセキュアに共有できる「Box(ボックス)」。その日本での事業を展開するBox Japanが設立10周年を迎えた。グローバル収益の19%を占めるまでに日本市場を急成長させたのは、設立時から10年間にわたって経営を担ってきた古市克典代表取締役社長である。シリコンバレー企業と日本企業の「いいとこ取り」を実践し、外資系日本法人としては異例の急成長をもたらした古市社長の経営哲学に迫る。

グローバル収益の19%を日本市場が占める

 いまや日本でも約1万5700社の企業が利用し、社内外での情報共有やコラボレーションのために欠かせないツールとなっている「Box」。ワードやエクセル、PDFといった文書ファイルはもちろん、画像、音声、動画など、ありとあらゆるコンテンツを簡単にアップロードして共有できるコンテンツクラウドである。今年の5月には、生成AIを活用したコンテンツの要約や生成をする新機能「Box AI」を発表。クラウドの形態を生かし、常に進化をしている。

Box AIのデモ画面(プレビュー画面上でコンテンツに対して質問を投げることが可能)
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 開発・運営企業のBoxは、2005年に米シリコンバレーで創業。日本法人であるBox Japanが設立されたのは13年8月のことだ。

「米国でのリリースから日本進出までに8年もかかったのは、世界で最もサービス品質に厳しい日本のお客さまにご満足いただけるレベルに達するまで、ブラッシュアップを重ねたからです」と語るのは、Box Japanの古市克典代表取締役社長。

 古市社長は、Box入社後、自らBox Japanの法人登記をして社長に就任。以来、10年間にわたってBoxの日本市場における事業活動をリードしてきた。立ち上げから参画し、これほど長きにわたって社長を務めるケースは、外資系日本法人ではかなり珍しい。

 しかも、Box Japanの収益はこの10年間で大きく伸長し、現在ではBoxのグローバル収益の19%を日本市場が占めている。

 一般に外資系テック企業のグローバル収益に占める日本市場の割合は、せいぜい4~5%といったところだ。10%を超えれば本社から重要な市場と見なされ、割り振られる投資の額も格段に増えるが、そこまでグローバルでプレゼンスを発揮できている外資系日本法人はめったにない。現在の円安という状況下、19%というBox Japanのプレゼンスが、いかに大きいかが分かる。

 Box Japanはなぜ、これほど大きな成長を遂げることができたのか。次ページからは、急成長の原動力となったシリコンバレー企業と日本企業の「いいとこ取り経営」の神髄を、古市社長自らが明かす。