1ドル150円接近で再浮上、相場把握に使えない「50年ぶり円安=日本衰退」論の正体Photo:PIXTA

ドル円相場は、1年前に151円をピークに反落したものの、今再び150円に絡んでいる。そしてまた、「50年ぶりの円安=日本衰退」論が浮上している。米日の金融政策で説明できる円安をもって、なぜ日本を極端に卑下するのか。その論拠となる理論の正体とともに、為替を読む実践的な指標、視座を明らかにする。(楽天証券グローバルマクロ・アドバイザー TTR代表 田中泰輔)

ドル円相場は米金利
動向で読むのが基本

 ドル円相場は1年ぶりに150円に絡む水準にまで上昇した。このドル円上昇を促す主要因は、米金利である。相場の底流には米短期金利が効く。ただし、短期金利の上昇サイクルが上部の2割圏まで上がると、その先の景気・インフレ下降を織り込む形で長期金利が低下し、ドル円はこれになびく。

 米国債10年金利は2022年10月にいったん4.3%でピークを付けた。その後、23年3月の米銀行危機が落ち着く5月まで3%台前半に低下した。この間、FRB(米連邦準備制度理事会)による利上げの停止が何度か臆測された。これによって、ドル円は151円から130円割れまで反落したのである。

 23年半ば以降は、再び米金利先高感が浮上した。追加利上げ観測は11月のFOMC(米連邦公開市場委員会)まで延長された。加えて、米国債10年金利も、予想以上の景気の堅調持続、インフレ高止まりでの高金利の長期化観測、米国債格下げと財政赤字拡大(=国債増発)への懸念などが相まって、4%台後半に急反発。米長短金利そろって上方志向を強めたので、ドル円も150円付近に急反発することになった。

 このように、ドル円相場の方向は米金利で読むのが基本である。原則論を言えば、米日金利差で読むものながら、いまだに日本の金利がゼロ近傍の超低水準にあるため、実践上は米日金利差を計算する手間を省いて、米金利を見るだけで良い。今後、ドル円が下降サイクルに転じるときも、米金利の持続的低下が最善の指標となるはずだ。

 次ページ以降、為替相場を動かす時間軸別に分類するとともに、円安を根拠にした「日本衰退論」のロジックを解き明かす。