10月27日未明に急逝した中国の李克強前総理10月27日未明に急逝した中国の李克強前総理 Photo:Lintao Zhang/gettyimages

10月27日、中国の李克強前総理(以下、敬称略)が亡くなった。今年の3月まで中国政治のトップで活躍していた大物の突然の死に、中国国内もザワついている。自宅から遠い上海のプールで倒れたこともあり、まことしやかに毒殺説がささやかれているほどだ。政治のトップにいた10年間、李克強は何をしたのか。そして彼の死は中国の人たちにどのような意味をもたらしたのか?(フリーランスライター ふるまいよしこ)

3月の中国共産党大会で政治から引退した李克強
しかし胡錦濤退場“事件”のおかげでほぼ話題にならず

 今年3月の政治大会で10年間務めた国務院(内閣に相当)総理を辞し、引退生活に入っていた、李克強が27日未明に急逝した。

 さっさと憲法を改正して任期を延長し第3期に突入した習近平・国家主席とは対象的に、李克強は前任者の温家宝・元総理と同じようにすべての権力を手放し、それ以降完全に政治の表舞台から姿を消した。引退当時の年齢はまだ67歳で、政府トップの暗黙の了解となってきた「68歳定年」に届かないまま権力の座を去ったことも、2歳年上の習近平と比較された。

 李のきっぱりとした引退の裏には体調不良があると伝えたメディアもあったが、これまで彼がどんな病気を抱えているかは明らかにされていなかった。

 特に3月の政府トップ交代の場では、久しぶりに公開の場に姿を現した胡錦濤の髪が真っ白になってめっきり老けており、さらに最も注目される採決の直前に職員によって議場から担ぎ出されるという、前代未聞の“事件”が起きた(参考:中国共産党大会「胡錦濤氏の強制退場」の衝撃、現地の大混乱に見る不穏な予感)。あまりに衝撃的な映像だったため、人々の関心は完全にこの件に集まり、同じ場で「裸退」(すべての権力を手放して退任すること)する李克強のことはあまり話題にならなかった。付け加えると、胡錦濤は実はアルツハイマーを患っており、担ぎ出されたのはそれが原因だったという。そのとき両脇を警備員に抱えられた胡錦濤が李の後ろを通りざまにその肩を叩き、李がそれになんとも言えない表情で応えている写真も、彼の死後ネットに流れている。