ビッグテック規制が失敗する、これだけの理由現代のプロレタリアートは「テクノ封建時代の農奴」か Photo:Shingo Tosha/AFLO

『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』の著者ヤニス・バルファキス元ギリシャ財務相による連載。今回のテーマは、GAFA(グーグル、アップル、旧フェイスブックのメタ、アマゾン)をはじめとするビッグテックに対する規制の有効性です。筆者は、カルテルやトラストと同じように規制するのは不可能だと説きます。

 近代社会は1世紀以上にわたって、並外れたマーケットパワーを持つ企業に対処しなければならなかった。ところで、いわゆる「ビッグテック」が私たちを支配する力は、過去に類を見ないものだろうか。 グーグルやアマゾン、メタは、1920年代におけるスタンダードオイルや、1970年代のIBM、もっと最近ではウォルマートと本質的に異なっているのだろうか。

 もしそうした過去の大企業と変わらないのであれば、1890年に制定された米国のシャーマン反トラスト法までさかのぼる法理に基づくビッグテック規制が可能だろう。米連邦取引委員会(FTC)のリナ・カーン委員長は、まさにそうした規制に向けて意気軒昂だ。

 残念ながら、それはうまく行かないだろう。

 ビッグテックは、私たちがこれまで目にしてきたトラストやカルテル、コングロマリットとはあまりにも深く異なっているため、同じように規制するのは不可能だ。

 アダム・スミスが描き出した資本主義の世界、つまり家族経営の肉屋やパン屋、ビール醸造業者が、道徳的基盤のある自由な競争を通じて公共の利益を促進するという世界は、現代経済とは似ても似つかない。鉄道やエネルギー、通信、さらには粉せっけんや自動車、医薬品に至るまで、ほぼ全ての産業は巨大なコングロマリット同士のカルテルである。

 だが、ときにはその支配力が緩むこともある。政治家たちが勇気を奮って反トラスト法を制定・施行し、場合によってはその法律を利用してカルテルを解体するからだ。

 では、なぜ同じことがビッグテック相手には無理なのか。その独自性はどこにあるのか。